ENo.0588　アユー・ドルイド

『アユー。僕からのお願いです。どうか覚えていてください』
『もし貴方が、身一つで戦場に投げ出されるようなことがあったら、そのときは』
『………』
『…………を、………ないで、……て………さい……』

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出動命令はまだない。
少しだけ余ってしまった朝方のひとまに、ぐうっと伸びをした。
恐らく沢山の戦場を超えて来たであろう彼の後を追うのは、正直なところかなりきつい。けれど。
「そんなこと、言ってられないね」
それ以上に頑張って鍛えるしか、生きる道も、進む道もない。
今更逃げる気などさらさらない。やり通すと決めた。そもそも私は運がいい。こうして戦地を共にしてくれる人がいる。
きっとこれから少しずつ慣れてきて、そしてその時が一番危ない。
余裕と油断は紙一重で、それは何より避けるべきで。だからこの気持ちを忘れないで。
いつか帰るかも知れない空で、今度こそ胸を張って飛べるように。
この霧を抜けるまで、走り続けなきゃ。

「…よしっ、頑張るぞー！」

…1人で拳を振り上げた姿を、近場に基地を置いた他ライダーに見られていたことは、恥ずかしくて言えそうにない。

――――――出動を告げる、サイレンが鳴り響いた。