ENo.0013　ロコ・シュタール

この前の傷痕が殆ど見えなくなったのは幸いか。
女子ほど見た目は気にしない質だから残ること自体は構わないのだけど、元いた世界では割と人と顔を合わせることが多い仕事を任せられているから、残らないのに越した事はない。

見た目、と言えば……そういえば、《残像領域》では俺のこの左目を悪いほうの意味で気にする人は案外見かけない。それどころか普通に受け入れてもらえている。
この左目のせいで、向こうでは眼帯をしないで外に出ると少し居心地が悪いんだけど、それを気にしなくて済むのはありがたい話だ。だからと言ってここに永住したいとまでは思わないけど。そもそも自分からこうなったようなものだし。

「平和が一番」なんて言うとそれこそこっちでは笑われるだろう。――幻想もいいところだ、なんて。
でも俺は職業柄、平和な分だけ仕事が減るんだ。平和を望む、と言うよりは楽がしたいだけだ。


……ああ、こういうことを言うと上部に怒られそうだな。やめよう。


◇


そういや二人のお見舞いに果物を色々持って行ったとき、ついノリでうさぎリンゴとかなんて切っちゃったけど、あれは果たして良かったのかだろうか。
味自体には影響はないと思うんだ。ただ、なんと言うか、こう……俺の今後の印象的に……（？）

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。