ENo.0268　ゴートリンデン

男は愛機と共に戦争で多大なる功績を上げた。しかし、祖国は敗戦する。

男は戦犯であり、死刑囚だった。
電気の通った椅子で最後を迎えるはずが。
規定の時間を超えてもその心臓は止まらなかった。
死ななかった者は、もう一度電気にかけられる。
しかし、幸か不幸か機械はその日それ以上動かなかった。
男はほとんど死んだような状態だったがまだ生きている。機械は直る見込みがない。
そこから先を決める法律は用意されておらず、これをさらに殺すことはその場の誰にもできなかった。


その日以来、男は病院のベッドで生きる屍となった。
指一本動かすことも出来ず。チューブで栄養を摂り。排泄の世話をして貰う。
喋ることも見ることも、皮膚感覚もほぼ全てが焼き切れてしまった。
看護婦も医師も、男の脳にも大きな損傷があるだろうと判断した。

しかし無情にも男の意識は明瞭だった。
運ばれてすぐ意識が戻り、耳もしっかりと聞こえている。

視界もない中、時折聞こえてくる話し声で自分の状況を理解しただ絶望する。
意思表示もできず、助けも求められず。
男は自分の生まれてからの記憶を何度も繰り返し思い出した。
その中でもおそらく一番楽しかった記憶、幼い頃に飼っていた愛犬との思い出でなんとか理性をつないだ。
来る日も来る日も、頭の中でおもちゃのボールを転がす。

どれだけたったろう。ある日、
おそらく夜、病室のドアが静かに開く音がした
するりと入ってくる獣の気配。鋭敏になっている耳にはその息遣いや足音がありありと聞こえた。

それは死んだはずの愛犬を思い起こさせた。
獣の気配は男の胸元に飛び乗ると、ゆったりと顔をひと舐めする。
感覚のない男には分からなかったが、確かにそんな音と気配がした。
すると、舐められた部分だけぞわりと息を吹き返す、男はそんな錯覚に陥る。

獣は、男の目を優しくもうひと舐めした。

今度は確実にぞわりとその部分の感覚が戻るのが分かった。
見えなかった目がぼんやりと目の前の獣の姿を映し出す。
それは、間違いなく男の飼っていた黒い犬だった。

どこからか迷い込んできた雑種の犬。

遊んでほしそうにこちらをじっと見つめる犬。

筋トレをしていると腹に乗ってくる犬。

くんくん言いながら餌をねだる犬。

じゃれついてきては困らせる犬。



がいる体で。

常に見えない何かと格闘する人生。そこに犬が居てもよい。

決まりは特になし。
各自好きなようにエア犬。
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格闘5：機動力+3％

（出入り自由。申請お気軽に。