ENo.0467　アクト=ユーティレス

エリカ「目標ポイントが近づいてきました。降下準備を」

前方に見えてきたテロリストの基地。周りは山に囲まれており、幸いな事に近くに町や村は無い。これなら派手に暴れても、一般人に被害が拡大する事は無いだろう。
目的地にはすでに何機かのWHが到着しており、交戦を開始している。

輸送機パイロット「投下するぞ、気ぃつけてな！」

空中でワイヤーの接続を解除され地面に向かって落下する。
着地の直前でブースターを展開して勢いを殺しつつそのまま遮蔽物に身を隠す。

エリカ「降下を確認。周囲のスキャン完了。敵は全員基地の敷地内に立てこもっているようです。遠慮は要りませんので、施設もろども破壊しましょう。それではミッションを開始してください！」

敵陣の横に回り込むように移動しつつ射撃。そこからさらに前に出る。こうする事で敵の目をこちらに向けさせ、味方の被弾率を下げつつ攻撃の機会を作り出す。そのための重装甲だ。
予測通り、敵の9割方がこちらを攻撃してきた。当然ながら全てを避けきれないが、問題は無い。ましてや適度に被弾しなければ敵も攻撃をする意味が無いと判断しかねないのだから。
敵の注意が集中している間に、他の味方が攻撃を仕掛ける。1機、また1機と立て続けに敵の兵器が大破していく。ここからは動きを変え、味方への攻撃を防ぐように立ち回る。
何度かの攻防が続き、戦いが終盤に差し掛かった頃、エリカから警告が発せられる。

エリカ「残りAP50%を切りました。敵は残りわずかとはいえ、注意してください」

モニターをチェックすると、残りのAPはおよそ4割ほど。まだ無茶が効きそうだ。エリカには怒られるだろうが、仲間が死なないためには必要な事だ。
大破寸前になるまではそうするつもりである。
そのまま敵を引きつけ、射撃を行い敵の装甲を削り、トドメは味方に任せる。次々と敵が爆炎に包まれ大破していく。

エリカ「スキャンが完了。周囲に敵影はありません。ミッションは無事に成功ですね」

安堵の声が通信越しに聞こえてくる。自機の損傷も先ほど以来無く、エリカを心配させる事も無かった。

エリカ「今回はだいぶ無茶な動きをしましたね？あなたなら大丈夫だろうと思っていますが、それでも不安になるような事は極力控えてください」

前言撤回、心配させてしまったようだ。しかしそれでもエリカは信じてくれている。その信頼を裏切らないようにしなければならないと思い直す。

エリカ「それでは、無事の帰還を祈っています」

輸送機と接続し帰路につく。
そんな光景を、遠くから見る影があった。

？？？「ほう、あの時よりも遥かに力を付けている……」

全身を黒にし、所々に赤のラインが入った機体。所属不明機だ。

？？？「お気に召したかな、M？あの者なら中枢になり得るかと」

Mと呼ばれた人物は、実に楽しそうな笑みを零す。

M「面白い、すぐにでも試したい所だ」

何かを見出し、それを取り込もうとする"意志"。Mの言葉からはそんなモノを感じる。

？？？「それは良かった。それからもう１つ。"彼女"の調整が終わったよ」

もう1人が示す彼女の調整。なんの感情も持たない無機質な言葉。

M「今度は完璧だろうな？」
？？？「さぁて、どうだろうね……？元が人であるがゆえに不安定な部分が残る。僕たちと違ってね」
M「ふん……まぁいいだろう。頃合いを見て出撃させろ」

不穏な話の後、所属不明機は静かにその場から立ち去った。

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エリカ「おはようございます。今日は早いですね？」

いつもより早めに起きてリビングへ向かう。エリカはすでに何かの作業を行っていた。

エリカ「これですか？次の任務の資料や、その他の情報などですね」

どうやら必要な物をまとめていたようだ。
その中に任務の内容が書かれた資料を見つけ、手に取る。

エリカ「それは、ある重要拠点を防衛してほしいとの依頼ですね」

エリカが手に取った資料を見ずに教えてくれる。確実に頭に入っている証拠だろう。

エリカ「少し前に、いくつかの部隊が霧に消えて行方不明になったそうなのですが、その部隊が突然現れたばかりか、かつて味方であったはずの部隊を襲撃したとの事です。となると、他にも襲撃される部隊があるかもしれないとして、部隊の所属する基地を防衛して欲しいという依頼です」

なるほど。しかし味方が消えて、いざ現れてみたら敵になっていたというのは、まるでどこぞのシューティングゲームのようだ。

エリカ「当然受けますよね？」

その言葉は、有無を言わさない圧力では無く、信頼から生まれる確認の意だ。すかさず頷き、出撃の準備を整える。

エリカ「情報では、火炎武器を使う兵器が多いようです。対策を怠らないでください」

生きるための情報を得て、それに合わせた機体を組む。準備は万全だ。出撃しよう。