ENo.0261　Solitus

「やっぱり死んだね」
「……なんとなく、予想はできてたけど……」

その日のカナエとソーナの会話は、その一言から始まった。
残像領域に迷い込んできて20日目。二人が目覚めて朝食をとりながらの会話は、録音しておいた前のニュースをもう一度確認したあとに始まった。
少し前まで通信端末越しにサポートを行ってくれていた人物の死亡。
なかなかに衝撃的なニュースのはずだが――カナエとソーナの反応は冷え切っており、お互いにショックを受けている様子は全くなかった。

「お仕事が終わったあとに死亡のニュースか。二人目だね」
「……うん」
「……どう見る？」

小さく頷いたソーナへ、カナエは静かな声で問いかける。
ゆっくりとした動きでベーコンエッグの欠片を口に運び、ゆっくりと味わって飲み込んでから、ソーナはカナエの瞳を真っ直ぐ見つめて答えた。

「……消されたって見る」
「さすがソナ。気が合うね」

くつくつと肩を揺らして、カナエは小さく笑う。

「これが一回だったら気の毒だったって考えるけれど、さすがに似たような条件で死亡のニュースが流れたら俺もソナと同じように考えるね。一人目のときは惨殺だったみたいだけど、二人目は交通事故か」
「……交通事故に、見せかけることもできる」
「そうだね。ちょいと手をくわえて交通事故のように偽装工作することもできる」

そういった偽装工作を生業としている者たちがいることも、カナエはよく知っている。
なんせカナエは長らくアンダーグラウンドの世界で生きていた少年だ、表にはあまり出てこれないような仕事が世界には存在していることは目にしてきたため、よく覚えている。
くるり。手に持っているフォークを軽く回転させて、小さく息をついた。

「そういう風に予想すると次に気になってくるのは犯人だけど――ま、とりあえずは調査結果とやらを待とうか。……全く、きな臭くなってきたねぇ。本当に」
「……ね」
「ま、悪くないんだけどさ」

小さく呟いた瞬間、ソーナもカナエの呟きに同意するように頷いて、口元に微かな笑みを浮かべてみせる。

――平常なように見えて、何かが狂ってしまっている子供たちの姿が、そこにはあった。