ENo.0176　クロムノート・ウェルサキオン

「…以上で新規戦闘システム『オーガアーム』の説明を終わります。何かご質問などはございますか？」

レイジングヴァイパーが収納された、薄暗い倉庫の一室に場違いなほどに明るい男の声が響く。
声の主は貼り付いたような笑みを浮かべた若い黒縁眼鏡の男であり、どうやら企業連に所属する社員のようだった。
男の説明を半分ほど聞いていたクロムは少し考えた後

「んじゃ聞くが『使い心地は前より良いのか？』って聞いて、アンタは『前の方がマシでした』と答えられんのか？」

「本当に悪ければそう答えますよ。
　私は商人ですから、お客様との信頼関係を得る為にも嘘はつきません」

「今みたいに言わない事はあるみたいだけどな」

「ええ、うっかり忘れていましたね。失礼しました。
　真面目に解答しますと『使い心地はお客様次第なのでお試しの上、当社にご意見を頂ければ幸いです』でしょうか」

皮肉気なクロムの指摘に関しても男の笑みは揺るがず、流れる様に返答をする。
傭兵を相手取る商売だからだろうか、男の対応は手馴れており、クロムを前にしても怖気づいた様子は無かった。
レイジングヴァイパーを提供された時からの縁だが、この男が焦ったのをクロムは一度も見たことがない。

「死地に出てから役立たずと分かったところでどうしろってんだ。遺言代わりに名指しでクレームでも送れってか」

「もし送って頂けるなら、誠心誠意対応しますよ。もっとも一番は、お客様が無事に生き残って頂く事ですが」

「そりゃ、そっちの不備で死人が出ました、なんてことになったら他の奴らに食われちまうだろうしな。
　内部抗争だっけか？　ニュースで見たぜ」

男はおや、と意外そうな顔を浮かべた。

「あなたがその手のニュースに興味を持つとは珍しいですね」

「傭兵だからな。雇い主に関する情報は敵の情報よりも重要視してるぜ。
　給料の未払いだの作戦の事前変更だの自殺の道連れなんぞに巻き込まれたくはねえからな」

「なるほど、それは確かに。
　ですが、給料に関しては安心して良いかと。
　お金目当ての方も多いですからね。最新鋭の装備で身を固めたハイドラを駆る皆様の不興を買ったらどうなるか、
　それが分からぬ愚か者はいないでしょうからね」

どうかね、とクロムは肩を竦めた。
今や隠しきれない程に企業連を取り巻く環境は混沌としている。
そんな中では信じられないような間抜けが思いがけず権力を得る事もあるのだ。
そうなれば企業連を取り巻く環境が――もっと言うなら自分達がどうなるか、分かったものじゃない。
共同体の混乱は戦争屋の稼ぎ時でもあるが、報酬はより不安定になるだろう。

じきに潮時だな、とクロムは感じた。
次の大規模作戦は目前に迫っているらしいが、その時の対応次第ではこの戦争に見切りをつけるべきだろう。
その後は――

「…………」

――霧戦争から離れた後。自分は、何をするつもりだったのだろう？

戦争！　戦争！　戦争だ！
喜べよ下種畜生ども。地獄のラッパが響いてきたぞ。
俺達が呼ばれている。
多くの血を流すため、多くの命を踏み潰すため、多くの死を広げるために。地獄の戦鬼が。

よう戦友！　アンタが求めるのは血か？　金か？　闘争か？　栄誉か？　はたまた正義なんて求めてるのか？
まあ、いいさ。どれだって。御大層な理由だろうがクソみたいな理由だろうが、やる事も同じなら逝く場所も同じなんだからよ。

どうあれ、ここにいるって事は俺と同じく戦争をより盛り上げたいってイカレ共だ。
死体と涙と恨みと鉄屑を空高く積み上げたいって、死んだら地獄行き間違いなしの畜生共だ。

同じ死体を漁る野良犬同士、せいぜい仲良く分け合っていこうぜ、なあ？

--------------------------------------------------
格闘反応な命が葉っぱ勢のあなたに。
ユニオン活動は格闘×3　反応×2 → 格闘×2　反応×3の順で更新毎に変更していきます。

10人の状態で死亡者が出た場合、また2更新以上行動しない場合は参加許可を外す可能性があります。ご了承ください。

ユニオン購入は何かしら意見あるまでは機動力＋3%を予定しています。