ENo.0649　アキラ・ハリアエトゥス

一通り作業が終わり、汗を拭って上を見上げる。
そこには、戦闘機に近い細身に鉄骨を束ねたような逆関節の二脚、そして各所に大量の推進器を取り付けた巨体が佇んでいた。

「大分いい面構えになったなあ、お前」

これがつい数日前と同一のハイドラだと誰が思おうか。
大きく姿を変えたこの機体は、しかし、間違いなく自分の乗機である“パンディオン”であった。


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時間は数日前にまで遡る。
腕試しにでもとコロッセオに出場登録をしてみた俺は、改めて自分のハイドラはジャンク同然であることを思い知らされた。

今から取り繕えないものかと設計を練り直していたところ、同ブロック味方陣営のライダー達に声をかけられた。
その彼らに助けられたのである。

どうにか余っているパーツを譲ってくれないものかと頼み、待つこと翌日。
ガレージで操縦棺だけでも新調しようと組み上げていたところに使い古しのパーツを運んでくれたのである。
大出力のブースター、虚無重量のロケット……型落ちと言えど以前の一線級のパーツであり、有用さに異議はない。
なにより、“パンディオン”を完成させるのに十分すぎる量の資材だった。


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そして組み立てと調整を始めたのが数日前の事。終わったのが今である。

「うわ、マズいな。入場までに試運転してる時間もない」

頭部を取り払いセンサー系は他に組み込み。武装はコロッセオのレギュレーションに合わせた物理仕様。
旋回能力は若干低下したが、速度は比較にならないほど強化された。恐らく先日までと比較すれば止まって見えるだろう。
最初に組み上げた飛行ユニットは撤去し、代わりに大出力のブースターを二基連ねて設置。上下動にはやや弱くはなったが、その分速度が上がったので問題はないだろう。
跳躍力も脚部を軽量型に交換したことで大幅に上昇しているため、上下動に弱くなってもいない可能性すらもある。

「これだけ機動力を上げておきながら装甲も若干増加、ただし耐久性そのものはダウン……」
「まあ、軽量化したからな。多少脆くなったのは仕方ない」

“パンディオン”とは、ミサゴという猛禽類の名だ。
空を自由に舞い、獲物を見つければ急降下して一気に仕留める。
俺はこの機体にこの名を与え、自由に空を飛ぶことを願った。
そして今、やっと願いどおりのスペックが整ったのである。

「ぶっつけ本番、コロッセオ初挑戦だ。……けど、飛べるだろ？パンディオン」

相手チームはどうにもコロッセオランカーに名を連ねる強豪揃いだ、という。
恐らくは俺のようなペーペーのライダーなど幾人もなぎ倒してきたのだろう、対峙したとして勝てる自信はない。
しかし不思議なことに、負けるという気はしていなかった。全力で飛び、全力でぶつかってやろう、と。

高揚感に笑みを浮かべながらトレーラーに愛機を積み込む。
さて、一機でも墜として帰ってやろうじゃないか。