ENo.0023　アンナ・T・パラボ

いつものように残像領域のマーケットをあてもなく意味もなく彷徨っていた。
（そう、私のハイドラ――USBのアセンブルはいつだってその場しのぎなのだ）
意味なく制圧したいなー、とか、まああまり考えていない。
私はそこまで考えなくてもなんか、足ペロ勢ことギルデンロウとか
そのあたりのアレには全然アレだけど、そこそこの戦果は叩き出して帰ってくるし
だからあんまり考えず――

「よお」

声をかけられ振り向くと、あー、誰だコイツ？
そのなんだかわからんやつは笑いながら親しげに話しかけてくる。

「企業連盟のおエライさんが激怒してるぞ。
　最近の雇われハイドラライダーが一斉にレジスタンス風情に手を貸したっつって。
　お前さんもそのクチなんだろ？」

そういやなんか掲示板で必死なやつがいた気がする。
時期的になんか企業連盟だかの偉い人って推測があって、
IDが真っ赤で、改行もできない。
多分ハゲオヤジだと思った。
バルカス必死すぎワロタ

「はぁ、いやまぁ、アタシはアレだもん、別に関係ないしな…」

実際怒ってても大して関係ないと思っていた。
そこまで目立ってないし
狙われんしょ

「しかしなんだっけ？影の禁忌？だっけ？
　なんかどえらいもん出してくるみたいじゃないか。
　始めから使えって感じだが…
　噂によれば戦場シミュレータが叩き出した、
　あんた達サイドの生存率は常に7割を割るとかなんとかよぉ」

ほーん。
そんなシミュレーションあるのか。
きな臭いけど。
だとしてもなぁ…

「だとしてもアレじゃん？アタシがその3割側になると思う？
　それにおみ足ペロペロ勢と違って、アタシ保険かけとるし…
　つーか、誰ですかアナタは」

少々ショックを受けたような男はここでようやく名乗ったが、
やはり記憶になかった。
曰く、同じミッションで過去に一緒になったらしいが…
長い目で見て半年ぐらい前になる可能性あるだろソレ！
エースライダーでもないやつの顔、いちいち覚えてねーよ！

「ま、まぁアレだよ、お前さんも身の振り方は考えたほうがいいんじゃないか？
　って言いたかったんだよ、知らない顔でもなかったしな」

などといいながら去っていった。
何なんだったんだアイツは。

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。