ENo.0185　フィサリース

ある惑星の衛星軌道で敵と戦っていた。真っ赤な地肌にレモンイエローの筋が走るガス惑星で、数え切れない小惑星を引き連れていた。妙に宇宙機の残骸が混ざっているのが少し気になったけど、ビームやミサイルを防ぐ盾として使わせてもらった。それは激しい戦いで敵も味方もどんどん落ちていったわ。お互いの戦闘機が半減した頃。焦っていたのかしら、敵の母艦が主砲を戦場の真ん中に撃ち込んだの。味方を巻き添えに。そしたら、ガス惑星を走る筋が震え出して、太くなっていったの。それに合わせて小惑星が一点に集まり出した。中隊長の指示で私は慌てて隠れていた岩から離れたわ。動き出した小惑星に押し潰される、僚機の悲鳴を聞ききながら離れていく岩を見ると、それは岩じゃなく大昔の宇宙戦闘機のエンジンだったわ。真っ黒に煤けて小惑星と溶け合っていたのね。ガス惑星の方はすっかり地色と模様が逆転していて星の軌道に、岩の集まった棒……いいえ、あれは舌ね。黒い舌が出来た。その頃には私たちはとっくに逃げ出していたわ。私は機体を捨ててOチャンバーだけになり、中隊長の機体にフックを引っ掛けた。たくさんのOチャンバーが鈴なりになって、その宙域から脱出したの。センサーを閉じる寸前、舌が敵の船団をひと舐めするのを見たわ。彼らも材料になったのでしょうね。