ENo.0261　Solitus

ウォーハイドラ、ソリトゥスは大破してから乗り手に恵まれず、忘れ去られていたウォーハイドラだった。
大量にレーダーを積むことができ、四本の足で戦場を駆け抜けながら仲間の機体たちを支えていたといたが、大破して乗り手を失ってから、その姿はぱたりと見なくなっていた。

――カナエとソーナが残像領域に来るまでは。

忘れ去られていたソリトゥスを見つけたカナエとソーナは、彼を修理して乗ることを選んだ。
カナエが修理したソリトゥスは再び戦場を駆け抜けることができるようになり、カナエの手によって以前とは違った動きをすることができるようになり、敵の居場所を炙り出すだけでなく攻撃をすることによって支援をすることができるようにもなった。

乗り手が変わったことによって、違う一面も見せるようになったソリトゥス。
ソリトゥスというウォーハイドラは――狼の姿をした大型の機械は、自分たちのものだと、カナエは考えている。

「……、……」

くるりと手に持っている工具を回転させ、カナエは天井を見つめながら小さく息をついた。
自分たちが残像領域にやってきてから30週目――自分たちが参加したこの戦いも、少しずつ――けれど確かに、終わりへ近づいてきているように感じる。
この戦いが完全に終わったらソリトゥスは、ウォーハイドラはどうなるのだろうか。
残像領域に置いていかなければならないのか、ハイドラライダーをまとめている組織に返却しなければならないのだろうか。

「……まあ、返却するなんて選択肢は俺にはないけどねぇ」

ぽつりと小さく呟いて、ソーナと一緒に眠っているソリトゥスに目を向ける。
一つ一つのパーツを選んで組み上げていったソリトゥス――ソーナの歌に反応するということは、自分たちの世界に溢れているパーツを使っても動く可能性が高い。
もし自分たちの世界のパーツを使っても動いてくれたら、残像領域から出ても修理をすることができるということになる。

「……俺もソナもすっげぇ頑張ってるもん。ウォーハイドラの一個くらい、貰っていっても構わないよね？」

にやり、と口元に笑みを浮かべて、カナエは寝転がっていたベッドから起き上がる。
いつか来るであろう日のことを思い浮かべ、彼は猫のようににんまりと目を細めた。