ENo.0349　ラキア・パラミダス

ラキアは自分自身に怒りを覚えていた。迂闊だった。どこかで、甘く考えていたのだ。
やはり誰かに心を寄せるべきではなかったのだ、少なくとも『敵』が存在しているうちは。

それは脅迫だった。
その気になれば、いつでもラキアの大事なものを奪うことができるという、『敵』からの。

私のせいで、ソラになにかあったら……
悪いイメージばかりが頭に浮かんでラキアの心をかき乱した。
一体どうすれば……どうすれば…



……落ち着け、とラキアは自分自身に言い聞かせる。
今のラキアは、あの時のように無力なだけの子供ではなかった。
戦う力がある、戦場で生き残ってきた経験がある。
自分が残像領域にやってきたのは、呪われた運命に決着をつけるためなのだと、ラキアは今ようやく気付いた。


冷静になってもう一度よく考えてみた結果、『敵』がいきなり過激な手段を取ってくる可能性は低そうだった。
少なくとも、ラキアが『敵』にとって利用価値がある間は。

メールの文面を見る限り、相手はラキアにもっと目覚ましい戦果を上げろ、と望んでいるようだった。
ラキアが活躍することで、得をする勢力、もしくは個人が存在するらしい。

けれど『敵』はラキアの死を望んでいたのではなかったのか。

『敵』がひとつだけだと考えるのは危険だ、とラキアは考えた。
複数の異なる目的をもった相手がいて、それぞれ別の思惑で動いているのかもしれない。

例えば、レンド社。
彼らがラキアに戦果を求めることは不自然ではない。
脅迫まがいの手段を使う理由がないので、レンド社がそれだとは思わなかったが。
けれど、彼らの目的も全て明らかではないので、絶対にないとは言えなかった。


その点に関しては、フレイド・コークスにたずねてみれば良いわけだが……
ラキアは躊躇した。

ロギーからのメールにもあったように、記憶を取り戻した彼が、以前のフレイド・コークスと同じ人間なのか、ラキアには確信がなかった。

鉄の騎兵を駆る騎士のためのユニオン。
とある王国が買い占めた土地に建つ巨大な要塞『エクゼター』を本拠地に活動をしている。

ユニオンメンバーになるには、騎士としての十分な名声、もしくは一等以上の位をもった騎士による推薦が必要。
シンボルマークは、青地に銀のガントレット