ENo.0378　フレイド・コークス

　フーヴァー・アズデルド。
レンド社の主要創設メンバーの一人、レイヤー・アズデルド博士の一人息子である。
2歳の頃に、父レイヤー・アズデルドは遺書も残さず自宅にて自死を遂げた。
警察により調査が行われたが、結果は心因性の突発的な自殺と判断、事件性は無いものとされた模様である。

　以後、母であるクレア・アズデルドに育てられる。
父の残した資産により生活に困ることはなかったようだ。
学業の成績は優秀であったらしい。
母クレア・アズデルドは彼が16歳の頃に病で死去している。
彼自身も2年ほど前より消息を絶ち、音信不通となる。
彼の失踪届は警察に出されているものの、よくある失踪事件の一つ程度に思われているらしい。
（毎年膨大な失踪者が居る訳で仕方ないかもしれないが）

　フーヴァー自身は犯罪者でも無い一般市民なので、特筆するような記録もなく、調べられたデータは上記程度のものである。
ただ、フーヴァーと親しかった同級生に尋ねたところ、失踪直前には父であるレイヤー・アズデルドのことを調べていた節があるそうだ。

　レイヤー・アズデルド博士は先述したように、レンド社の創設に携わったメンバーで、レンド社の技術部門のリーダーだった。
極めて優秀な学者で、レンド社が発展した大きな原動力となり、またレンド社の創設者クルス・レンドとは同窓の友でもある。
警察の調査により、その死に事件性は無いものとされたものの、自死した理由は不明だ。

　ここからはフレイド、フーヴァーの奴にも知らせてはいる話になるが、キルスーラ・アンクネイトというライターが、レンド社について記した記事がある。

記事の中身を要約すると、レンド社の幹部たちの大半が、アウラ社と言う小さな企業を吸収合併した直後より、立て続けに不審な死を遂げている。
その中の一人が、レイヤー・アズデルド博士で、そして社長であるクルス・レンド氏もほどなく事故死を遂げている。
その元凶はアウラ社で、アウラ社という得体の知れないその企業は吸収合併した筈のレンド社を逆に乗っ取ってしまったという話だ。

この話がキルスーラ・アンクネイトの作った与太話か、それとも真実かの判断は何とも言い難い。
だが、事実としてはその通り、アウラ社を吸収合併した直後から、レンド社の幹部達は不審な死を迎えている。
フーヴァーの奴が、失踪前にどうしてレイヤー・アズデルドの死について調べ始めたかは分からないが、その結果、レンド社…アウラ社に何か違和感を感じてもおかしくはないだろう。

　フーヴァーの奴が、レンド社の調査とはまるっきり無関係なところで、何らかの事故に巻き込まれて記憶を失い、其処を偶然レンド社に助けらた。
記憶を取り戻してもらいレンド社に感謝してますって話なら、そいつは、めでたいんだが…。
そんな話で納得出来るかね？

サイボーグ医学・ロボット工学の分野で名を売る中堅企業。
高い技術力を有した製品は評判高いが、軍事兵器市場への参入には消極的。
「ありふれた製品を、高品質で。」をモットーに掲げている。