ENo.0689　Gyro Quay

救世の功徳！VS！恩寵の功徳！世紀の対決が今幕を開きます！

「そもそもマニ車とは回転によって読経と同等の功徳を得ようというもの。
功徳とはシンプルでなければならない。シンプルとは純粋であり、純粋であるが故に全てを救う。……御託はいいでしょう。これが、俺の『究極の功徳』です」

マニ太郎は懐から一本のマニ車を取り出すと、静かにそれを回し始める。
徐々に速度を上げる回転。
それに比例するように、会場に圧倒的な功徳が溢れ出す。

「な……なんと！この濁流のような功徳は何だ？！赦されている筈なのに押し潰されるような……！一瞬でも気を抜けば即座に解脱に至ってしまいそうじゃわい！」

「まず、マニ車の本体に使用したのは、樹齢千年を越える杉。どんな偉人よりも世界を見届けた、まさに歴史の生き証人たる素材です」
「な……なんと！まさかこの小さなマニ車の為だけに……」

「そして表面に刻まれたマントラは、クロムによって刻まれている。クロムはヒヒイロカネの正体として最も有力な金属の一つです。あの三種の神器にも含まれているという説がある」

「つまり……この文様は日本最古の宝物にも等しいと……？！」

「そして最後に、内部に埋め込まれた経文。これには世界最高峰の僧侶、イーガーコートク僧直筆のものを使用した。シンプルに、これ以上ない最高の物。これこそピュアな功徳。回転が加わり更に倍……これこそ『究極の功徳』に相応しいものだろう」

「さ、流石やマニ太郎はん……奇をてらう事なく、純粋に、ただただ膨大な功徳を生み出した……『技巧』には『技巧』で対抗出来るが、『力』を覆すのはそれ以上の力のみや……この勝負、マニ太郎はんの勝ちに違いない！」

「さあ！恩寵の功徳とやら！俺達のマニ車を越えるものを出せるのなら出してみろ！」

会場がマニ太郎の圧倒的功徳に呑み込まれる中、「恩寵の功徳」側の組頭「巣極 江羅伊」は静かに、しかし蔑むように笑っていた。

「下賤。傲慢。お前の功徳には一片もも有り難みなどないわ」
「……なんだと？」

「人は功徳を勘違いし始めた。
より多く積むものが優れ、より多く生み出す事が救いに繋がる。人を赦す筈の功徳はその大小を競うものとなり、人を清める筈の功徳そのものが人の心を穢す要因となる。この小僧が産み出したものは、正に偽りの功徳の象徴そのものだ」
「俺の功徳が偽りだと？！ならばお前は『本物』の功徳とやらを用意したというのか！？」

「無論。会場の皆様方。是非ご覧に。そして皆様を真の救済へと導こう。お待たせした。これが『恩寵の功徳』の用意した、真の功徳だ」


マニ太の功徳 全国大会編 第435話
「マニ太郎破れる！恩寵の切り札はイーガーコートク僧！」より抜粋

チャンネル回せば世界が回る。

世界が回れば皆解脱。

さぁめくるめく電波の濁流を廻ろう。
君の脳髄を脅かす 嵐の奔流に呑まれよう。