ENo.0647　有明

仲間が死んだ。
笑顔の可愛い子だった。
手を伸ばせば、届く距離にいたはずなのに。
気づいた時には、彼女は何も言わなくなっていた。

それきり、彼女が目覚めることはなかった。
追悼は質素なものだった。
生前の彼女は、穢れを酷く嫌っていた。
それを受け入れることは、死より辛いことなのかもしれない。

……僕には理解できないよ。
死より辛いものなんて、一つぐらいしかないと思うな。
そんなこと言っても、二度と君には届かないんだけどさ。

誰かは黙っていた。
誰かは泣いていた。
誰かは諦めていた。
僕は笑うしかなかった。

何事もなかったかのように、旅は再開された。
一人抜けただけなのに、その一人の穴は大きすぎた。
いつしか僕らは、一人一人と消えていった。
最後の一人が僕に言った。

『君は居なくならないで』

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「僕は居なくならないよ」

僕は強い。
だから死なない。
それがどうしたというのだろうか。

いつも死なないのは僕だけだ。
何も守れない強さに意味はない。
伸ばしても掴めない手は、無力でしかない。

僕が進みすぎただけなのか。
皆が追い付けなくなっただけなのか。
どちらにせよ、独りであることに変わりはなかった。

誰も傍には居てくれないから。

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「────」

跳ね起きる。随分と汗をかいている。
傍のイルカの抱き枕を片手で抱き寄せ、目覚まし時計を確認する。
……朝というには遅い。だいぶ長く寝てしまったようだ。

「……。」

独りであることを実感すると、途端に寂しさが押し寄せてきた。
いつにも増して酷い。最近はそれなりに解消できている方だったのだが。
抱き枕に身を寄せつつ、手許の端末を手に取って、通話記録から一つ選んで電話をかける。

「……あ、おねーちゃん？おはよ。今どこにいるの？
　……ん。今からそっちに行くね。それじゃ」

一方的に通話を切って、携帯食料を食べつつ軽く身支度を済ませる。
味気ない。今度はメープル味にしてみよう。この世界メープルあるのか？まあいいや。
着替え、朝食、歯磨き、祈り……不足なし。いってきます。またね、僕の部屋。

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“ Perhaps I know best why it is man alone who laughs;
　he alone suffers so deeply that he had to invent laughter. ”

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太陽は此処に在り。