ENo.0276　ローデット・ダイス

「ようやく帰ってきたな、お前は……」

「……いや、流石に悪かったよ。無断で何週もいなかったのは」


冷や汗は出ないが似たような感覚がある。
整備士の前でギャンギャン怒鳴られながら流石に何も言い返すことは出来ず
大人しく言うことを聞くしかなかった。
自分の体とウォーハイドラの整備をしてもらってかれこれ何時間小言を聞いたやら。


「別に詮索するつもりはないさ、こっちもお前も大人だ。
今更そんな過保護にまでなるつもりはないし、ただそんな何週もいなくなると何かあったと思うだろうが」

「……それは過保護と違うのかよ」

「揚げ足取るのが上手いなあ、ったく。
先生からお前に通信きてたから本当に何かあったのかと思ったんだよ」

「は？」

「何週前だったか……詳しくは見てないけど通信取るか顔出すかしてやれよ」


何で今更連絡が？そう思いながら通信を確認すると文字を読みつつ頭を掻いた。


「……ちょっくら行ってくる、問題はないんだよな」

「ああ、お前もハイドラも良好。常時ステルス機能もつけといたから他のハイドラに見つかりにくいだろうよ」

「サンキュ、仕事だけはちゃんとするよな、お前」

「だけは余計だ」


◆　◆　◆


「じいさん」


縁を切ったというローデット・ダイスを最初に作った人物。
そこまで足を運ぶといきなりスパナでぶっ叩かれた。
痛覚はあるが、それでもヒューマノイドだから並のパンチだったらどうってことはない。
が、スパナは別だ、普通に武器だ、痛い。


「って～～～、何しやがるクソジジイ！！」

「その前に言うことがあるんじゃないか？」

「…………ごめん、なさい」


とん、とキーボードをタッチして映る画面を見れば何も言えなくなった。
売られる人物は数日前に概要と画像が流れる、つまりだ。
前回売られたとしてデータはもうどこに回っていてもおかしくはなく
外見がほぼ同じである『ローデット・ダイス』としてすら行動することが危うくなっていたのだ。
そのデータが送信されていれば、の話だ。
そのことについて通信がきていて今に至る、というわけだ。


「油断してたとは思う……データ回る前にハッキングして止めてくれたのは助かった」

「『賽の眼』に自動的に引っかかるようにしてるからな、見て吃驚したわ。
あの引きこもりがダイスとしてじゃなくミヅカとして売られようとしてたんじゃから」

「ああ……本当だよ。自分でもあそこまで行動できたのには驚いた」

「全くだ。ただでさえ老いぼれ寿命を更に縮めて殺す気かと思ったわい」

「だから悪かったよ！しつこい爺さんだな！！」

「……」

「……本当、悪かったと思ってるよ。どうしても、ダイスじゃなくて動く必要があった」

「内容次第じゃな」

「……大事な奴が、行方不明になってた」


それだけを言うと目の前の男は言葉を疑ってこちらを見ていた。


「それは、あれか。例えば利用相手とか取引相手とかそういう……」

「悪かったな、今までそういう奴がいなくて！！」

「いや、本当驚いたわい……お前からそんな言葉が出てくるとは」

「別にいいよ……どうせそういうのに縁がなかったのは本当だし」

「まあ、お前がその姿言えるような奴に会えたってことだけでも安心じゃわい」

「ん……」

「で、曾孫はいつ見られるんじゃ？」

「待てジジイ、何でそんな話になったんだ」

「老いぼれの楽しみといえば孫の顔くらいじゃろう」

「誰が産むか！！！」


などという口論が暫く続いた、バルトを助けて、助けられてから異様に疲れる気がする。
お蔭でアセンブルもなんだかヤケクソになったような気がしなくもない。
因みに、昔からというか最初に『ローデット・ダイス』を作ってくれたこの人物は
私の実の祖父であり、唯一の身内である。
女らしくあるなと言って男にしたり、人の研究諦めさせるのに片眼売ったりしたり
ロクでもないことしかしていない、それでも最終的に頼りにする人物がこの人しかいないので
ただただ溜息しか出なかった。

とあるものを求める為の集まり場。
それが何であろうと構わない、情報収集の場でもある。


制御*5、ユニオン購入は適当