ENo.0594　祟鬼漬クロガネ

「――応えろッ！！ロウブリンガー！！！！」

その瞬間、装甲の継ぎ目から文字通りエネルギーが爆発する。
装甲が勢いよく吹き飛び、フレームが剥き出しになった。

『マシン・オーバーロード……。遂に来ましたか、ネームレスの神髄を見るときが……！』

「キルコ！？引っ込んでろって言っただろ！」

『そうも言ってられないでしょう？ワタシに合わせなさい祟鬼漬クロガネ……。』
『霜の巨人を破壊して、世界を守るのでしょう？ならば、ワタシの力が必要なはずです。』

「……わかったよ、操縦のサポート権限を付与する。メインは私だ、文句は言わせないよ。」

『まァいいでしょう……。一応確認しておきますが、最大出力は搭乗者に多大な負荷が掛かります。』

「構わない。メフィルクライアを止めるためなら、私はなんだって……！」

『そう言うと思いましたよ。では……、始めましょうか。』

―――――

「うげっ……ごほっ、げほっ……。」

咳とともに喉奥から込み上げてきた熱い鮮血が、モニターを赤黒く汚す。
オーバーロードの過負荷は、私の身体に想像以上のダメージを与えたようだった。

『……だから言ったじゃあないですか。まァ、はっきり“危険だ”と警告しなかったのはワタシの過ちですが。』

「この程度、仲間を失う痛みに比べたら……！」

『アナタがいいならそれ以上は言いませんよ、それに……。』

霜の巨人が崩壊していく。それに合わせるようかのに、この世界を覆っていた霧が、少しずつ晴れ始める。

『……この戦いも、終わったようですし。』

「……いや、まだだよ。まだ……、終わってない。」

晴れた霧の向こうから迫りくる無数の影。
残像のようで、残像よりも異質な『ソレ』は、新世界の禁忌から『発芽』したものだと、何よりも物語っていた。

『いいえ、終わりですよ。アルラウネが発芽しない以上、ワタシ達に打つ手はありません。』

「そんなの関係ない。発芽しないのなら、発芽するまで時間を稼ぐだけだ。」

『それでも発芽しなかったら？』

「……その時は、アルラウネなしで世界の崩壊を止めてみせる。」

『アナタ……、本物の馬鹿ですねェ……。ククッ……、やはりアナタに目をつけて良かったァ……。』
『世界が終わる前に、いいモノが見れそうです。』

「世界は終わらないよ……うっゲホッ……ガッ……、終わらせてたまるか……！」

口内にこびりついた血液を、ペットボトルの水で流し込む。

「……キルコ、鎮痛剤。それとラピアさんに通信繋いで。」

『あの魔女ですか。……しかしまァ、アナタはミリアサービスに住んでいながら、大胆な事をしますよねェ……。』

操縦席横から排出された鎮痛剤を、左肩に突き刺す。
身体の中に薬が染み出していく感覚とともに、少しずつ痛みが引いていく。

「五月蠅いな。いいから黙って、通信繋いで。それから、しばらく喋らないで。」

『はァ……、アナタという人は他人には愛想よくする癖に、ワタシにだけあたりが辛い……。』

「当たり前だろ、クソッタレ。」

『ククッ……、それもそうでしたねェ。まァ、あなたの仲良しゴッコに付き合わされないだけ、よしとしますか……。』

薄気味悪い笑みがモニターから消え、通信画面が表示される。
ようやく彼女とともに、戦うことが出来る。この緊急事態を前に、同じブロックに配備されたのは幸運だった。

……それになにより、彼女を失わずに済んだ。
というか、その心配が必要ないほどにラピュリメント・バーキュラは強い。
これならもう少し、ロウブリンガーを攻撃寄りの調整にしても問題なさそうだ。

ロウブリンガーは撃墜されたものの、完全に破壊されたわけではない。
いくつか整備を済ませれば、素早く戦線に復帰することが出来るだろう。

「……繋がった。ラピアさん、聞こえる？」

Reinclaft-Millia Service

数年前にできた、残像領域の片隅の整備屋。
相場よりほんの少し高い値段で、ウォーハイドラのみならずライダーも整備する。
早い話が、機体のメンテをしに来るついでに、店主が常々作りすぎる飯のおこぼれにありつける整備屋である。
飯だけの利用も歓迎だが、この店にはメニューはない。店主が作りすぎたその日の飯が出されるだけである。

！店および店主（ENo.4）の既知可
！ユニオンに参加せずメッセで利用する体も歓迎
！ロールするキャラを推奨するかも

細かいこと：http://midnight.raindrop.jp/milliapede/union.html