ENo.0683　オスカー・ヘンズレイ

　知り合ったリタという女と一緒に飯を食い、連絡先は交換したものの俺にしては珍しくそのまま帰宅した。
気安さと面倒見のよさ……それでいて、うっかり尻でも撫でようものなら脛に一発蹴りを食らわされそうな
手ごわさも兼ね備えている。あれはいい女だ……

　部屋に戻り灯りをつけると、備え付けの冷蔵庫から缶ビールを取り出しソファに腰掛ける。
端末を操作して適当に配信動画のチャンネルに合わせると、プルタブを空けて口をつけた。



　能動的に追いかけているニュースも無かったのでチャンネルを変えないまま
背に翼を背負った娘が夜の世界を旅しているフェアリーテイルの動画をぼんやり眺めていると
通知音が鳴った。携帯端末を開くと、先日申請しておいた“生体電池化手術”の日取りを確認する内容だった。
何故自分がそこまでするのか正直よくわからないが、多分次の戦場で全てにケリがつく
……そんな、予感が俺に決心を促した。


　「首の付け根と肩甲骨の脇、左右に合計四ヶ所コネクタを設置しました。身体機能に影響はほぼありませんが
サウナや寒冷地ではコネクタ周りの皮膚が火傷や凍傷になるリスクがあります。それと、仕様書にも
注意書きがありますがウォーハイドラへのブーストにあなたの生命エネルギーを使いますので
過度の利用がリスクを伴うこともご了承ください」

「ああ、わかってるよ」


　局所麻酔をして２，３時間程……施術をした医師からの説明と、何種類かの書類を貰い
こんなので大丈夫なのかと思うほどあっけなく終了の日帰り手術だった。
処置室の脇にある鏡で包帯に覆われた背中を確かめてから服を着て施設を後にする。


……さて、どうなるか。
煙草を吸おうとポケットに手を入れたところで、医者から手術後３時間は禁煙を言い渡されていたことを思い出した。