ENo.0147　フェティヤ・クェリフィート

***

ひとりの龍の末裔がいた。

そのつばさは空を捕らえることなく。
そのひとみは地を見下ろすことなく。
ただ、『いつか』を望んで練習を続けた。


ちいさな少年は、足をすべらせ崖のそこ。
崖のそこは霧のなか。
霧のなかには、棄てられたでんしゃと真っ黒なぼうし。

……そうやって、ひとりのハイドラライダー、
ひとりの車掌がうまれた。

***


車掌をはじめてから何日たったんだろう？
来たばっかりはびっくりしてたけど……もう慣れた。
ここにいたら時間感覚も無くなりそうだ。かあさん、おれがいなくなって悲しんでるだろうな〜。
……剣で斬られそう。

最初はひとりだったけど、今はモーヴェとかいうユーレイと一緒にいる。たぶんちょっとおれの方がにいちゃん。
にいちゃん、なんだかフシギな気分だ。


……おれは帰れるのか？とか、おれは危険なトコにきちゃったのか？とか。
たまに頭に浮かぶ。
でもまあ……帰れりゃいいよな！


明日もがんばろう。

壊れてしまった、もはや時代遅れ、彼氏にフラれた腹いせ。
あれこれの理由で積もったジャンク品の山の中。
打ち捨てられたようで、実はとても手入れの行き届いた三段櫂船型ハイドラが一機。
ある一人の幽霊が、そこで暮らしているのだ。


「メシと寝床？必要なら出すけどオレあんま料理上手くねえよ」