ENo.0180　マーテル･ライソン

もうそろそろ、四年目になるか。
私がこの醜悪なハイドラの乗り手としてここ、有機複合機開発艇にやってきたのは四年前の同じ頃だった。


孤児院で血は繋がっていないが、姉と慕っていたラスさんが仕事に就いて出て行って以来、年下を苛めて大人達を困らせてばかりの日々を送っていた私にハイドラライダーにならないか？ という話が来たのは、霧の巨人の大戦が終結してしばらくした後、丁度四年前の話だ。
別に孤児院での暮らしが嫌いだったわけではない。むしろ、毎日メシが出て世話を焼いてくれる人が居て居心地は良かったぐらいだ。
だけれど、早く独立したかった私はすぐさま承諾した。
ライダーの配属先がラス姉さんと同じ、有機複合機開発艇だと聞かされたのなら誰が止めても意味がないのだから、誰にも相談はしなかった。

だが、待っていたのはバイオ兵器に装甲と操縦棺を埋め込んだようなハイドラ『シバリーⅣ』と付き合う日々だった。
期待していた、姉との再会はなく、マニュアルや機体の資料を読んでいく内に彼女は既に亡くなっていた事を知った。
ハイドラライダーとしての訓練や研究の合間にせめて、姉さんの最後、もしくは思いを綴った記録でもないかと探しはしたが、記録には研究に必要な情報だけ、開発艇の大人達からは一切話を聞くことは出来なかった。


「もうそろそろ、四年目になるか」
ラス姉さんの事を知りたくて、姉さんと同じ事を始めてからそれぐらいになる。
私は未だにわからないままだ。
わかった事と言えば･･･開発艇とシバリーシリーズはまともなものではない事ぐらいだ。

「余計な･･･しかも不快な記憶が増えるだけだったな」
とぼやいた。

白兎研からの脱走組の研究者のラボ兼飛行要塞。
パイロットの技能を必要としないハイドラ、シバリーシリーズの開発を行っている。