ENo.0176　カヴネル・レビン

空の戦いは爽快だった。コックピットは直接風を通さないが、HUDがもたらす視界と浮遊感が風を切って飛ぶ喜びとなって全身を巡る。この調子なら音の壁を軽々と超える日もそう遠くはないだろう。

相棒がその身に受ける風を、前のようにオレも感じることが出来たら、これ以上の体験は――

「うぐッ！？　…チッ！」

夢のような時間はそこまでだった。戦闘ヘリからの機関砲を浴びた衝撃とアラート音で意識が現実に引き戻されていく。
戦場での油断は即、死に繋がる。訓練生の時代から繰り返し頭に叩き込まれたはずなのに。しっかりしろ、オレ。

手動操縦とは言え、相棒も思い通りに動かせるようになったし、ハイドラのライダーとしても馴染んできたようにも思えるが、たいていこういう時期が一番危ない。先程の被弾はその勉強代だと思い、改めて気を引き締める。

そして、帰還してしばらく後の事。

オレはペンを握り、生体電池手術と生体部品手術の同意書にサインを入れた。