ENo.0071　アキラ・ハリアエトゥス

今日も今日とて、“パンディオン”の修理をする。

……ああそうだ、みなまで言うな。まただよ。
不慮の事故によりコロッセオに参戦することになった俺は、案の定というかなんというかさっくりと撃墜された。
こうなるだろうとは思っていたが、実際にやられてみると凹むものがある。
せっかくだから共に禁忌戦争終盤を駆け抜けたジュネリア・ハーヴェストのハイドラ……アクラネシアに傷の一つでも付けてちょっかいを出しに行ってやろうとも思っていたのだが、それすらも叶わなかった。
もっと強くならなければ、と折れた翼を予備と交換していたところで、ふと通りすがりの言葉が耳に入った。


『リー・インが死んだらしい』


ぴくり、と作業の手が止まる。リー・イン。その名前は知っている。
“禁忌戦争”時から名の知られた、腕利きのライダー。
実力者ややる気のあるライダーに呼びかけ、一大作戦を実施した……しておいて、本人は参戦しなかった、という伝説を残すライダーだ。
あの時俺はその作戦に乗って……ああ、あの頃から“パンディオン”を完全飛行特化の撹乱機として運用していたんだったな。

あの戦いを生き延びた猛者ですらこうも簡単に死ぬのかと怖気づきながら、リー・インの記録を見る。
……ちょっと待て。5年前にKIAってなってるぞ。死亡者リストにもリー・インの名はない。
となると残像なのか……あるいは、本当は生きていて、別人を装っていたのか。
似た別人だったからそんな噂が立ってたってセンまでありえる。

そもそも俺は、例の作戦の時のメッセージと噂でしかリー・インなるライダーの事を知らない。
死んでいようと生きていようと、関わりのない話では、ある。
しかしそれでも、何を思って戦ったのかと相手の事情を考え始めるとつい感傷にふけってしまう。悪い癖だ。


「……僚機は居たんだな。看取って貰えるだけいいもんだ」


もしも俺が死ぬ時は、これと言って誰かに気づかれることもなくひっそりと終わるのだろうと思うと、少し、一眠りしたくなった。

廃棄された様々なものが集まり、
それを目当てに人々が集まり、
集まるために様々な建物が増えていった地区。
ハイドラパーツの素材になりそうな質の資材も転がっているようだ。







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