ENo.0301　HF-600

「おうい、メンテに来たよ～」

間延びした声がガレージに響いた。
その声の主を追うように、ガラガラと車輪の音が続く。無人のカートの中に様々なパーツが乗せられていた。

「今度は飛行タイプにしようと思うんだ。重多脚だときみの制御システムが生かせないから」

「システムをシャットダウンしてくれる～？アセンブルし直すから」

「あれ？」

「……あー」

「そうだ、音声会話オフにしてたんだ」

そう言って、その男は胸ポケットから丸い端末を取り出し、太い指でたどたどしく操作をし始めた。
ウォーハイドラ間で使われる通信にアクセスしているようだ。

「あー。もしもし。ロクマル聞こえる？」

『はい。こちらHF-600です。』

「よかった～。君の機体を飛行タイプにアセンブルし直そうと思ってるんだ。
　それでシャットダウンしてほしいんだけど」

『いいえ。シャットダウンは管理者しか行うことは出来ません』

「あー。認証してなかった。音声認証開始……ぼくだよ。」

『認証しました。』

大きいクモのモンスターに似たシルエットが、通電ライトをちかちかと点滅させた。

『ご用件は何でしょう。』

「……あ～っと……シャットダウンしてくれる～？』

『わかりました。何秒後ですか。』

「いま」

『わかりました。シャットダウンします――――……
　シャットダウン可能。3秒後に電源が落ちます』


ぷしゅう、と僅かに機体に残された【霧】が排出される音がした。
同時に機体の全てのライトが落ちると、ガレージ内の照明が勢力を増したように見えた。彼から見ると、逆光でますますモンスターのようだった。

「ふう」


「さて……目覚めたらびっくりするかな～？自分に翼が生えてるなんて。」


そう言って、丸みを帯びた大きい体を揺らしながら、彼は工具を手に取った。

索敵の調整を主とするユニオン。メカニックがおり調整が受けられる。