ENo.0321　“ウィナー”・ザ・ビート

［Report-10］XXXX-XX-XX
　
　［セクション・３］の攻略に成功。
　部隊によっては甚大な被害を出している模様だが、こちらの所属部隊は幸運にも最小限のリスクでゲートを解放できた。
　
　偽装契約の詳細を一部更新。
　単一の組織に従属していると思わせるミスディレクション手法はここまで有効だったが、リスクの顕在化を確認したため方針変更。
　もともと白兎生体化学の手持ち技術であるバイオ兵器を戦術に採用しているため、契約更新に違和感を持たれる危険は低い。
　とはいえ、どこから藪蛇をつつかれるかの判断は難しい。今後も警戒を厳とすること。
　
　“ノイズ”の問題は未だ潜在的脅威であるものの、遺跡攻略に直接の影響は現在のところ無し。
　…本当に、あれはただの《残留思念》なのか？　自分の、捨てた、過去の──
　
　否。
　我々の使命はただひとつ。
　それ以外に、顧みるべきものは無い。
　残像であろうが幽霊であろうが自我の残り香であろうが、関係はない。
　引き続き、任務遂行のため、状況を再開する。
　
　
　──秘匿通信によるメッセージを送信。
　──当該ログは1分後に自動的に消去されます。
　
　
　（画面暗転）
　
　
　
　
　
　
　使命を──果たすまでは。すべてを捨てる、最期のその時までは。
　私は。
　
　
　
　『…オレは……──』

『切り札は常にただひとつ』