ENo.0328　"Canary"

よぉ、いらっしゃい。パーツかい、それとも機体の整備かい？
新しいのもいろいろ入ってるぜ。

……あ？　アレはれっきとしたウチの客だ、ライダー様だよ。
今は浮浪児みてぇなひでぇナリしてるがな。
前の仕事でだいぶやられたらしくてなぁ、
機体はボロボロ、おまけに相棒まで亡くしたんだと。

ハイドラの方はキレイに直してやったけど、
本人の気持ちばっかりはどうしようもねぇやな。
次の仕事もやる気らしいが、あの状態で大丈夫かねぇ。

そういや、その前も死人が出たって言ってたっけなぁ。
最近はそうそう死なねぇもんだが、立て続けに運の悪いこったよ。
それでも本人が無事なんだからむしろ運がいいのかもしれねぇが、
同じ戦場になった奴らにはちょっとした疫病神かもな。

ここだけの話、あの娘、自分の"飼い主"を殺して
ライセンスを奪ったなんて噂もあるぐれぇだ、
あんまり近づかねぇ方がいいかもしれねぇぞ？

はぁ？　オレぁそんなの気にしねぇよ。金さえ払ってもらえればな。
結果としてウチが儲かるんなら疫病神さまさまだ。

そうだおめぇさん、カツドン……えぇ、「ソースカツドン」って知ってっか？
なんでもあいつ、それが食えるところを探してるんだとよ……

たとえば、帰り道を見失った山中の崖から。
あるいは、あたたかなベッドで不思議な夢を見ながら。
もしくは、道路を走るトラックの前から。

自身が望むと望まざるとにかかわらず、
残存領域に入り込んでしまった子供たち。

彼らのほとんどは身寄りもなく、
何の後ろ盾もないまま霧深い戦場を彷徨う。

彼らが還る場所はもう、霧の中にしかない。