ENo.0351　パイ・クアッド・ラズベリィ

「無難に火砲でどうでしょう？」

「却下ですわ」

「ブレードで格闘戦」

「却下ですわ」

「ミサイルを過積載して近寄る者全て殲滅するのは」

「却下ですわ」

「では敵機の異常を誘発する装備を積んで」

「却下ですわ」

「いっそのこと索敵に特化してサポートに回ればいかがで……」

「却下ですわ」

「……」

「……」

「……お嬢」

「きょっ、却下ですわ……」



P.Q.が蹲るのはミストエンジンの駆動音及び供給音のない、重厚な装甲の内側である。

『ボクスド・キャンディ』の機内は、静かで、外界から隔絶されていた。

少女の唇は引き攣って歪み、不遜に笑おうとして、泣き顔めいた可哀を漂わせている。

培養装置の平和的転用によって精製された白砂糖をティースプーンでその口に運ぶ。

ジャリジャリと奥歯でそれを噛む音。膝をぎゅっと抱えて身を縮こめた。

次に来る言葉を怖がり嫌がるような、待ち受けているような少女へ、無機質で安っぽい電子合成音が言葉を継ぐ。



「お嬢。はっきり言うが向いてないぞ、お前。我が全部決めて戦ったほうが早いのではないか？」

「……」

「アレもコレも却下却下と。まぁよくも。特に前線に出る訳でもなく他のハイドラライダーの連中を眺めては震えてるだけの癖に。一応、危機的状況では頭が回るようだが……そのようなものに頼っていては埒が開かない」

「……き……」

「？」

「け……敬語…………」

「これでよろしいでしょうか。さて、話の続きですが、どうせガタガタ震えてるなら戦場じゃなく宿で震えていればいい、あとは我が勝手にやる、という件について前向きにご検討を……」

「……だいいち」



少女の声は上擦り掠れていたが、『ボクスド・キャンディ』の内部によく響いた。



「あなただって素人みたいなものじゃないですか。会話程度でしょう、満足にできるのは。そのために、作られたものなんですしね、あなたは」



「私は、STUを再興する以前に。あなたと一緒に戦いたいのです。黙っているなんてできません」

「……」



「培養装置、しかないか……」

「いいんですの？ 本末転倒というやつではないですか、あなた……イールドにとっては…」