ENo.0326　〈家族〉

……外にいる間のことを、ほとんど覚えていない。
世界と意識のピントが合わさった時に見たものは、
父さんの笑顔だった。
拾い上げてくれたときと同じ笑顔で、俺を持ち上げて――

嫌な予感がして、声を出そうとした時には……
もうハッチが締まっていた。


暗くて狭い。指先は震え、酷く冷たい。
息が苦しい。どうして、どうしてこんなことに！
「ウウ、……ウ、ウウア！！ア……」
声すらもろくに出せない。
嫌だ、怖い。どうして、何が起きている。ごめんなさい、ごめんなさい、
頭の中でぐるぐると声が回っておかしくなりそうだった。

感覚が一段外に引き伸ばされ、ああ、戦場が見える。
巨人の体になってしまう。
何が起きているのか、どうして、こんなことに。

けど、それでも、撃たなければいけない！
死にたくない！死にたくないの！死にたくない！！

そうだ、死にたくない。
俺が、俺が家族を守るんだ。
妹を、母さんを、セリーンさんを、

そうです、守りましょう。
〈家族〉を、皆を。





おねがいあなた
しんじて
わたしはなにもしていない
ほんとうに
おねがいします