ENo.0134　ギルデンロウ

【戦況・アセンブル】
　ミッションごとに企業から送られる敵の戦力データが今まで間違った事は無い。その事は俺たちハイドラ乗りが連中のマッチポンプの一パーツだという疑念を深める材料のひとつだ。
　しかし、もちろん、俺には関係はない。

　トーチカが13基、イーグルが9両、固定砲台が4台。そしてテンペストが2機。
　ぬるい戦場だ。

　ルカ・タオユンを筆頭とするnoobの群れと、幾度かミッションに参加してきたが、俺のいた戦場で撃墜されたハイドラは今のところ一機もない。
　ハイドラと装甲車どもでは戦力があまりにも違う。トーチカなどに至っては、要は歩兵の群れでしかない。
　もとより対等な戦いではないのだ。テンペストもデカいだけの的。minionとturretだけが俺の敵らしい。
　俺はcoopゲームをする為にここに来たわけではない。smurfアカウントで雑魚を狩るのを愉しむ低脳なプレイヤーではない。

　追加装甲を外す。元より戦力差のありすぎる戦いなら、ダメージトレードという考え方は棄ててよい。追加の補助輪《265:リング》を購入。より火力の高い電磁ブレードを新しく作製する。

　さっさと終わらせることでフラストレーションの表現をしようとしている。子どものようだ、と思うが、実際、俺は子どもなのだ。ずっと分かっている。

『ハイドラ乗りは戦場にある限り、死と隣り合わせの存在だ。
実体剣やレーザーブレードなどを機体に握らせ、
火器を目前に対面して戦う格闘機乗りなら、死と重ね合わせの存在といっていい。
　敵の中に孤立しながら、斬り開いた敵機の残骸の奥に、同じく剣を振るう味方機を識別することがある。
会話がなくとも、そのような面子を幾度も見つけていると、僅かな連帯感を抱くものだ。
遅かれ早かれ、奴らの姿は見ないようになる。
「奴は霧になったんだ」感傷混じりに言う奴がいた。
俺もいつかはそうなるのかもしれない。しかし俺たちは剣を握ることをやめない。
名誉のため。生きてる実感のため。病的な矜持のため。あるいは死ぬために、剣を握らなくてはならない。
　……そして敵陣の中で、また新しい顔を見るようになる。“物好き”は次々やってくるのさ。
だって、残像領域はそもそも“物好き”のための場所だろ？』
　――そんなことを言ってたアイツは、つい昨日で、霧になったよ。