ENo.0261　Solitus

ボイスメールでのやりとりを終了し、カナエは長い髪をかきあげて大きく欠伸をした。
この残像領域へ足を踏み入れ、ソリトゥスと共に戦場を駆けるようになってから七日目の朝は、苦いニュースとやりとりで始まった。
今日はソーナが起きてくるのが遅くて本当によかった。
ソーナはあの女性の夢を心から応援していたから、あんなニュースを聞けば強いショックを受けるだろう。
もちろん、いつまでも彼女に話さず隠し通せるわけはないのだろうけれど。

「……この世界にも随分な手口でやる人がいるんだねぇ」

ニュースの内容をぼんやりと思い返し、小さく呟く。
変死体。拷問されたあと。惨殺といってもいいだろう。
強い衝撃を受けるニュースだろうに、たいした衝撃を受けていないのは自分が過ごしていた場所が場所だったからだろうか。
皆が皆、生きるために必死になっていた掃きだめの街。
昨日まで笑っていた人が突然動かぬ人になることだって、しょっちゅう起きていた裏側の街。

「……さっさと犯人捕まってくれるといいんだけどなぁ。安心してマーケットにも行けないじゃないか」

一人ぼやきながら身支度を整え、髪をとかし、いつもの位置で二つに縛ってツインテールにする。
しっかり顔を洗って化粧水と乳液でコンディションを整えたあとは、いつものように下地を塗ってファンデーションやアイラインなどのメイクを施していく。
てきぱきとした動きでメイクも完了した頃には、すっかり目も覚めていた。

「……今日も生き残れたらいいんだけどねぇ。なんとか一週間生き延びれたんだから、ここで死ぬのなんてごめんだよ、俺は」

溜息混じりに呟いて、カナエはキッチンへ足を運ぶ。
今日の出撃の時間は刻一刻と近づいてきていた。