ENo.0044　ロウシャ・ゼイルストゥラ

　「あちゃあ、随分と派手にやられたもんだ」

　ロウシャはいつもの間借りしているユニオンの共同格納庫ではなく、所属先が保有する大型格納庫にいた。
　というのも、先の戦闘の際に彼一人では手に負えないほどに機体が痛んでしまったからだ。

　「霊場っつーのか、あれは。クソッ……あいつら霧に紛れてどこにいるんだか全くわからねぇから、うっかり踏んじまった」
　「地雷と違って脚から飛ばないのが救いだな。あんたの乗ってるような機体が脚やられたらおしまいだろ」
　「ああ。脚が捥がれたらあとは死ぬだけだ。俺がしてんのはそういう仕事だ」

　やれやれと言った様子で整備士は咥えていた煙草を携帯灰皿に突っ込む。
　全体に外部から圧力を受けた痕。特に胸部装甲は抉り取られるように凹んでいた。操縦棺を狙われたらしい。
　
　「まずは装甲めくってみて、中の状態にもよるが……丸一日はかかりそうだな。マーケットでもまわるなり、ゆっくりしてこい」
　「……頼んだ」

　やけに落ち着いた様子で、ロウシャは整備士を見送った。
　撃墜こそされなかったとはいえ、愛機にここまでの損傷を負わせたのは単に自分のミスである。

　「……大人しくしてろよ」

　相変わらず返事もしない機体にそれだけ声をかけて、ロウシャは格納庫を出た。


　＊＊＊


　それから数時間後、彼は言われた通りにマーケットを訪れていた。

　この市は毎週並ぶパーツが更新される。ロウシャは休養のために先週は訪れることができなかったが、それを悔やんでいた節があった。毎週更新されるということは、少し目を離したうちにパーツが型落ちするということである。先週も装備を更新しておけば、ということばかりが頭をよぎった。

　「火器はまだ使える。問題は機動力だな。もっと早けりゃ避けれるもんもある……ブースター……いや、補助輪だな。今以上の飛行性能はいらねぇし……」

　独り言を呟きながら、機動系パーツ……さらにいえば補助輪のあたりを食い入るように眺める。

　気になった補助輪の仕様書を、視力の落ちた目で睨みつけるように読んでいた頃、不意に声をかけられてロウシャは振り向く。

　「なんだ、お前らかよ……」

　見ればそれは、よく知った顔ぶれであった。


　＊＊＊

　special thanks !
　 Eno.158 Luoluca Marmalade
　 Eno.244 Amata&Infini

何らかの理由によりハイドラに縛りつけられたライダーが集まる。掃き溜めとも言う。
　
一部メンバーの素行不良により世間からの評判は芳しくない。

音楽専念。