ENo.0076　マリエッタ

「かっ……か、返せ！！！返せよ、ばかっ！！！！！」



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柄にもなく、そうして普段ならあり得ないように取り乱したのは、もう数日前の事。
全く、背後に手癖の悪い幽霊を連れて歩くといつ何時何をされるか、わかったものじゃない。
……何をされたかって問われれば、それは誰にも言えない、そんな話なんだけれど。

「【今の僕】にはとても大切なモノなんだよ、あれは。察しろ。」

って言ったところできっと余計に馬鹿にするだろうし、笑うのだろう。
……まあ、その、無ければ無いでも困りはしないんだけれどさ。
もしや男装を止めずにいた方がこの件でネタにされる事なんてなかった、かな……なんて思ってもみたりして。
神サマがいるというのなら、どうして僕には与えられるべきものが与えられなかったのだろうかと、問い詰めたい。
末の妹には「それは、僕の分もかな？？？」というくらいには、その豊満なものを与えたもうているというのに。
そして、そういう方々から憐れまれたり、笑われるのならまだ理解できる。

「……あいつだって、特段大きいワケでもないだろうに。」

ああ、もうやめやめ！この話題は終わり！自分が惨めになるだけだし！！
え？何？自分から振っておいて何を言っているんだって？

「やかましいわ。」


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神サマで思い出した。
僕は吸血鬼に呪いをかけられた一族の生まれで、所謂魔族ってヤツ。
反してあいつは、シスター。ま、生前の話だろうけれど。所謂聖職者ってヤツ。

「よーく考えれば、あいつは僕らの種族の天敵だよね。」

聖職者からしても、滅すべき存在だろうに。あいつはそれに気が付いているんだろうか。
戦闘に出れば「エッタちゃんの守護霊」なんて言っているけれど。

「ヒトの大事なPADは盗るわ、口は悪いわ……あいつの方が僕よりよっぽど悪魔じゃないかねぇ？」


……嘘。
それでもまっすぐで、屈託のない笑みを浮かべて

　　　　　「……、天使かよ。」

眩しいんだ。
あいつの姿は僕の目には眩しいんだ。
僕も、同じようにキレイだったのなら、隣に並べただろうにな、なんて思ってしまう程に。
そうして、これほどまでに過去に戻りたいと思った事はない。

ああ、神サマ。せめて、せめて、一緒に居られる間は、どうか隣に並ぶ事をお許しください。
僕はその後、どんな罰でも受け入れましょう。

魔族としてあるまじき、【聖職者】(あいつ)への憧れを　どうか　どうか　今だけは……―――


……なんて。
柄にもなく、そうして普段なら信じもしない神とやらに祈ったのは、つい先刻の事。