ENo.0008　エリカ＝ヒースハイデ

「ﾁｰｯｽオッサン元気～～～～～～～～」
「……ああ、それなりに」
「暗くね？」
「最近上がちょっときな臭くてな」
「マシュマロ食う？猫係が今食ってっけど」
「遠慮させてもらうよ」

男はため息をついた
その様子を隣で見ていた女が訝しげな顔をする

「どうした？　最近君から連絡してくる事はなかったが」
「あー　まあ　今日はホラ　直接聞いたほうが早いんで？　別に猫係経由でもいいっちゃいい訳だけど？」
「ふむ」
「この前来た変な兄ちゃんさ」
エリカも大概変な兄ちゃんではある
「変な？」
「一発的殴れっつってきた奴」
「ああ。あいつか」
「オッサンの知り合い？」
「旧い友人だよ」
「そいつとオッサンにさ　別に共通の知り合いとか居た？」
「………………居たな。一人」
「ん　把握　そんだけわかればじゅーぶん」
「どうしたんだ急に？」
「いや別に？　なんとなくですし？　んじゃま用済んだんで　あざっしたー」

通信は切れた


「…………」
男は顎に手を当てる
旧友である技師との共通の知り合い　技師とは何度か行動を共にしていたため厳密には何十人も当てはまる
しかしその中で特筆すべき人物なら一人しかいない
戦場に駆り出す男のハイドラ　その姿を常に同じ戦場で見守っていた存在
彼は画家兼ハイドラライダーと自称していた

男はエリカの顔を初めて見た際既視感をまるで感じなかった
……しかし今は違う
画家は黒い髪と瞳にかっちりした黒い服を好み　何が面白いのか常ににこにこ笑っている
ちなみに技師も大体笑っているが彼はにやにやのほうが近い　男は仏頂面だ
エリカをよく見ているうちに気付いた　彼と画家は顔のつくりと体形だけなら似ていなくもない
画家はいつも笑っているイメージが強すぎて　エリカは無表情のイメージが強すぎて二人が結びつかなかったのだ
画家の髪を白く瞳を薄紅に　そして一切の表情を消したならば
……男はかぶりを振った

（やれやれ。馬鹿な事を考えてしまった）
いくら画家とエリカの顔が似ていたとしても
どちらもヒースハイデに深く関わりがあるとしても
（もしかしたら、あいつがエリカになって帰ってきたのかもしれないなんて）
男は再びため息をついた

*にゃー*

（猫用ベッドが置いてある）