ENo.0261　Solitus

いつものようにソリトゥスと戦場を駆け回って、無事に戻ってきてから、損傷したりした箇所を直してからの時間。
送られてきた偵察画像とボイスメールを繰り返し確認しながら、カナエは小さく溜息をついた。
影も形もない防衛部隊。
無数の何かの残骸らしきものに、巨大な白い塊。
これが一体何なのか、カナエにはよくわからない。
正体は気になるのだけれど、あまりにも情報が足りない今、いくら考えてもわからないし、予想もできない。
――覚悟はしていたけれど、なんだかどんどんややこしいことに巻き込まれているような気がしてならない。

「まあ、ややこしいことに巻き込まれるなんて、今更だけどさーぁー」

そもそもソーナを勝手に連れ出して逃げ回っている今の状況も、十分“ややこしいこと”だ。
深く、そして長く息を吐きだしながら背もたれに思いっきりもたれたとき、こっそりとこちらの様子を伺うソーナの視線に気づき、カナエはそちらへ目を向けた。

「なあに、ソナ？　どうかした？」
「……テイ、お風呂入りに行く？」
「そのつもりだけど」

この拠点にはまだきちんとしたバスルームはない。
そのためハイドラライダー向けに作られた施設まで足を運び、入浴などはそこで済ませているのだが――カナエの返事を聞いたソーナの目が微かに輝いたのを見て、カナエは微かに表情を引きつらせた。
この話の流れは、どう考えても、いつものあれだ。

「一緒に入ろ」
「……、……、……あー。別にいいけどさぁ……ソナ、本当にそれ、俺以外に言っちゃ駄目だからね？」
「……？……うん」

カナエの言葉に不思議そうな顔をしつつも小さく頷き、ソーナは必要なものを用意するために部屋の奥へと姿を消す。
……まだソーナが文字通り何もできなかった頃に、彼女を洗うために一緒に入浴していた、その結果。
毎回一緒に入浴するのを強請るようになってしまった相棒の様子に、がしがしと頭をかいた。

「……教育って、難しいな……」

……カナエがそんなことをとても小さな声で呟いていたのを、ソーナは知らない。