ENo.0406　ファイブカード

　
先日に次の遺跡要塞の攻略がおよそ7週間後だと聞かされた時、俺はまず「それじゃあ遅すぎる」と思った。

だが、今になって思えば7週間後ってのはそう遠い話でもないだろう。
ちょいとばかし“仕事”を請けるなり物漁りでもするなり、あるいはのんびりバカンスでもしてりゃあっという間に過ぎる期間だ。

なら、なぜそう思った？



心に巣食うわだかまりは日に日に大きくなっていやがる。この稼業から身を引けと囁く内なる声も。
焦りか、恐れか、はたまた渇望か。

自分の欲の深さはそりゃァ自覚しちゃいるが、今までこういう思いに苛まれたことはそうなかった。
夢中で野を駆けて、ふと気付いたら前も後ろもなんにも見えなかったような。

老いかもしれねェ。それとも虫の知らせかも。
なんにせよ、これはきっと分岐路だ。
どっちに進むか、それとももう進まねェのか、選ぶ必要がある。そう遠くない将来に。



メールで送られてきた次の“仕事”に目を通す。
地下空間に未確認機がうようよしてやがるんだとか。
中でも目を引く機体、宙を泳ぐひょろ長い異形は、識別名を『レッドドラゴン』というそうだった。

───ハッ！
竜だと。薄汚い鼠にゃ過ぎた相手じゃねェのかい。

こいつは行く先を占う戦場になるだろう。
俺はどっちへ進みゃいいのか、それとも歩む足すら焼き尽くされちまうのか、一つ試してみてやろう。

かつての乗り手たちの遺したもの。

今は霧深い荒野に広がる射撃訓練場としてここに在る。
晴れ間のある時分には、乾いた発砲音が繰り返し響く様も聴き取れる。