ENo.0344　ネッサ・ガラヴァン

ネッサ・ガラヴァンは戻らなかった。
ああ、大したことじゃない。想定内のケースだ。
生死？いやいや、そういう話じゃない。
「ドゥロール社」が彼女をもう必要としないということさ。

ドゥロール、つまり雀という意味だ。
「弊社」―アフラムインダストリィ―の小規模プロジェクトはその名義を使うことが多いんだが。
ガラヴァン、その名前の意味も雀だったかな。

彼女の仕事は弊社のウォーハイドラの開発業務―末端のテストライダーとして―だけだ。
コンセプト507は望み得る最適なライダーを得て、実地での開発を終えた。
結論は出たんだよ。あれは失敗作だ。

もう少し違う結果になることを期待して予算を投じたが。
結局潜霧艦艇に近付くばかりで…
その行き着く先はアリューシャントレンチと大して変わらない。

だが、「本社」の超近接格闘型ハイドラ相手に一定の成果は示せたろう。
ただのテストライダーではこうは行かなかった。
特別なモチベーションのある者だからこそ。
先方の希望に沿った結果とは言えこれは嬉しい誤算だったね。

この結果は次に繋がる。
プロジェクト自体は凍結されても、人は止まらない。

　　　　　　　　―――ドゥロール社・コンセプト507開発報告会で交わされた雑談

memo.
・非合法都市攻略戦までの機体データを元に当面はパーツ開発を行う。
・戦闘記録について。該当戦域は重度霊障区域指定のため、時間・空間的に情報の不確実性が高い。
　以降の記述は参考程度。
・超重装甲群はほぼ全損。コストパフォーマンスに問題。
・脱出艇・コアハイドラ・装甲艇の三重構造は有効。
　最終的な攻撃手段を脱出艇に残すこと。
・車輪型脚部を備えた未確認機がTYPE507の援護に入った。
　撃墜された様子は無し。
　戦闘記録の確度を上昇させる可能性あり。要追跡。

『整備記録』
ドゥロールType507/06「ルフ＝アフバル」
rev．020
・テストライダーと共に実機喪失のため、プロジェクト凍結。

我々アフラムインダシトリィは
企業都市キルガールを拠点にする企業ユニオンです。
歴史は古く自由都市時代からの重工業産業の組合を基としており
現在は企業年として軍需重工業を中心に各種ウォーハイドラの武装、また装甲兵器の生産を行っております。
当領域等には現地での需要調査、およびウォーハイドラパーツの研究開発試験
並びに販売を目的として今回は参入させていただいております。
どうぞよろしく。

■今回のお知らせ。　[第１６週]
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
我々は新たに新機軸のミスとエンジンの開発に着手しました。
先のプロジェクトの終了により機動部位と装甲に関するデータ収集がひと段落ついたとの発表も……

また今回我々が迎えたドクターらの助力により……