ENo.0367　エリオット＝ウツロギ

「エリオット、前に出過ぎ！」
「ビビってんじゃねえ！ ガタガタ言わねえで着いてこい！」


「両腕部破損、頭部メインカメラ破損。脚部機能不全……どんな無茶したらこんなんなるのさ。頭のネジが何本抜けてんだかわかりゃしないよ」
「ネジ……？ 俺はハイドラじゃねえ。ネジなんかあるか」


「あっはっは！ エリオット、酒よわーい！」
「……うるせえ黙れ頭に響く……殺すぞ……おまえ、ころす……」


「右翼ヘリ部隊！」
「そっち任せるよ、エリオット！」
「言われなくても！」


「私は、ここじゃない世界から来たんだよね」
「ハッ。どおりで。こんな酒の強い女がいるか」
「……」
「痛え痛えなにすんだ！」
「まあ、あそこに帰りたいなんて思わないんだけどさ……帰る場所がないっていうのは、辛いよ」
「そりゃおセンチなこって」
「だからさ、作ろうよ。いつか。君と私の、帰る場所」
「……そんなことが、俺達にできると本気で思ってんのか？」
「さあ。でも今は、そう思うところが私の帰る場所なのかも」
「……」


　どうしてあの時。
　俺は何も答えなかったんだろう。

残像領域の端、無法者やハイドラライダーの集う酒場。
人の生き死にを賭けのタネに、今晩も乱痴気騒ぎが繰り広げられている。
合成アルコールと正体不明のジャーキーが売れ筋。
まともな人間は寄り付こうともしないだろう。

マスターに向けて大ブーイングが飛び交っている。