ENo.0516　如月

　パイロットをデバイス69式甲01号のコンディションチェック。

　生命維持……、規定値を達成。
　精神安定……、規定値を達成。

　損傷なし。
　該当デバイスの継続利用を決定。


　…………………………………………。


　アーキテクトより業務連絡。
　近々、アセンブルの基本方針を修正する見込みだ。
　これは組織から通知されている新しい計画書が関係している。

　如月のウォーハイドラは機動力を重視した格闘よりの調整を採用し続けている。
　これは根幹であり、そう容易くは変えられん。
　アーキテクトが眼を着けたのは、アセンブルを構成するパーツ。
　如月のハイドラは、多くの場合、軽さと機動性に特化した軽車輪脚部を選択してきた。
　だが、以後は軽二脚を選ぶべき、というのがアーキテクトの意見だった。

　二脚は中庸、特化した戦術との相性はそれほどでもない。
　それゆえに失敗する可能性が大きくなってしまう。
　その欠点を埋めるだけの効果を、格闘の新機構に期待しようというわけだ。

　面白い。良い心がけだ。
　一考の価値がある。
　即断即決で承諾した。
　アーキテクト・クラウス……、この男を抜擢した私の判断は、やはり正しかった。


　…………………………………………。


　69式の状態は特筆すべき点はなく、極めて良好だ。
　素晴らしく安定している。

　戦闘によって目立った消耗はハードウェアに見られなくなった。
　すでに数度の出撃に耐えうる品質だ。
　死亡保険が適用された汎用ライダーの再生処置頻度は高い。
　試験段階に過ぎない69式の整備性は、すでにそれらを上まわっている。

　ソフトウェアの性能は元より仕上がっており、品質の安定性はすでに基準値を達成している。
　堅実かつ精確にハイドラを操作する。
　戦線投入直後から熟練の兵士であり、即戦力として機能する。

　量産型ハイドラライダーの実用化……。
　これが現実のものとなる日は近い。

　近い。
　そのはずだ。


　…………………………………………。


　戦闘人格および学習記録をバックアップと照合……、差異無し。
　コンディションチェック。

　生命維持……、正常。
　精神安定……、正常。


　さあ、出撃の時間だ。

残像領域のある場所。
ある都市のうちのひとつ、霧都市。

都市のはずれ、その中にひとつ、霧の中でぼんやりと明かりが灯っている建物が見える。

霧と混じる工房の煙。
ここは、ダガー工房。
ハイドラのためのダガーを造るための人々が集う場所。
硬質ダガーに魅せられた人々が集う場所。

今日もダガーの職人、技術者、お客、全然関係ない人。
いろいろな人物がいろいろな目的で集まっている。

その様子を工房の片隅で、
無口なバーテンが笑顔で見ている。


※説明
・ダガーユニオン
・【訓練】格闘*5　【購入】経験値+1
・雰囲気ユニオン
・片隅にショットバー