ENo.0029　猫目 黄金

　件名：心配かけたね

　From 黄金
　To 琥珀

ハロー兄貴、そちらはどう？俺は元気だよ。

撃墜されちゃってから丸2週間休んじゃった。身体はすっかり大丈夫。心の方も、腕無しさんがいろいろ面倒みてくれたよ。
これからはまたハイドラライダーとして復帰できる。しっかり休んだ分、しっかり元を取らなくちゃ。

……俺さ、本当は変な風に生き急いでたのかもしれない。わざと辛い事に身を置いて、自分を試して……それで分かったのは、俺が炎を克服するのは無理だったんじゃないかっていう現実だけだったから。
そりゃ、みんな炎は怖いものだと思う。けれど、みんなは炎を見ても身体の底から寒気がしたり、吐き気を催したりしない。そのことが悔しくて、なんだか自棄になってた。それでつい、ぽろっと死ねなかったな、なんて言っちゃったんだけど……そしたら腕無しさん、とんでもなく怒って。凄く怖かった。兄貴にもきっと同じくらい怒られるんだろうなって思ったら、凄く寂しくなって。
それから少し泣いて、腕無しさんと休暇する事にしたんだ。最初は無理矢理だったけれど、途中から俺も楽しくなってさ。

……ねぇ、兄貴はさ。もう一人の自分がいたらどう思う？しかも、性格とかは自分とは真反対な自分だったとしたら、仲良く出来る？いつか、腕無しさんを兄貴に紹介出来たら良いなって思うんだ。

　--- 2017.7.7 ---




　件名：羨ましい

　From 腕無し
　To 琥珀

よぉ兄弟、俺だ。

黄金が次の戦闘から復帰する。体調や精神も問題ないようだ。いつもの無理してやってる感じはなさそうだから、まぁ信用してくれ。撃墜されない、とまでは保証出来ねぇがな。
2週間の休暇は存分に楽しませて貰ったよ。殆ど毎日、黄金に付きっ切りで世話をしてやった。あいつも楽しそうでな。羨ましいだろ？羨ましいよな？

だがな、やっぱりあいつは時々俺を見て、そしてその奥まで覗くような目で何かを考えているのさ。きっと、俺を見てお前を……あいつにとっての兄貴を思い出してるんじゃねぇのか？羨ましいよな。羨ましくて怨めしいよ、お前が。どれだけ俺があいつの側で兄貴面したって、結局は本当の兄弟じゃないんだよ。あいつはお前の弟で、俺の弟は死んだんだ。
黄金は死んだんだ。死んだ。俺の愛しい黄金は死んだ。だが、今俺の側に居る黄金も、俺にとっては愛おしい。そしてその兄弟の絆を持ってるのは、俺じゃない。お前なんだ。怨めしい、妬ましい。お前が羨ましい。俺の欲しいモノ、無くしたモノを持ってるお前が。

この悲しみを、俺は誰に向ければ良い？誰を壊せば良い？

　--- 2017.7.7 ---

残像領域に幾つも存在するジャンクヤードのうちの1つ。