ENo.0176　クロムノート・ウェルサキオン

この霧だらけの世界に、それは気づかれる事無くゆっくりと訪れていた。
冷たい濃霧の姿をしたそれは、戦場に音もなく現れて死者を見守るように留まり、戦いが終わるといつの間にか消えている。

「死ぬのを傍でじっと待ち続けるなんて、まるで死神みたいね」

今日も、いつも通りそれは一人の死者を見送ったところで、見知った顔に声をかけられた。
穏やかで快活な彼女にしては珍しく、いやにとげとげしている。
心当たりはあったのか、それは銀髪の少女の姿を取って声をかけてきた赤毛の少女へと話しかけてきた。

「あながち間違っているとは言えませんね。私はそういうものですから。
　…それでフィーグルさん、私に、何か？」

フィーグル、と呼ばれた少女は銀髪の少女を憎々しげに睨んだ後、吐き捨てる様に。

「白々しい。こっちが狙ってた血族に、手を出そうとしたんでしょ？
　それ自体は単に取り合いでしかないんだからいいんだけど。あなた、何かしたでしょ」

銀髪の少女の目が細まるのを見て、フィーグルの予想が確信に変わる。

「…何をしたの？」

「お察しの通り、ここに来るまでの経緯に関しての記憶を一部消させて頂きました。
　後は…そうですね。少しだけ、あなた達が見た時よりもまともにさせてもらいました」

「…なんでそんなことを」

問う声に力はなく、銀髪の少女はそれが可笑しかったのかふふ、と笑みを零した。

「分かっているでしょうに。その方が彼にとっても、私達にとっても都合が良かったからですよ。
　あの時の彼と違って、随分と生気というものがあるでしょう？
　私としてはやはりそういう方が好みですし、あなた達としてもその方がやりやすい。
　彼にとっても、多分あちらの方が気が楽というものでしょうし」

フィーグルは沈黙する。
それを肯定と見て、銀髪の少女の笑みが深まった。

「あなた達のそれは、面白い試みだとは思いますけれど。
　そんな面白いことをして、私が興味を持たないとでも思ったんですか？」

「……そうね。そこは迂闊だったわ。少なくとも、あんたが関わる可能性は予想しておくべきだった」

でもね、とフィーグルが不敵な笑みを少女に向けながら続ける。

「アンタのとこは嫌らしいわよ。飼われるのは今までと変わらないんだから、こっちがいいってさ」

「あら…それは残念ですねえ」

顔だけは残念そうに。けれど、口元には隠しきれぬ笑みが浮かんでいる。
それが言い様もなく不吉で、フィーグルは思わずぞっとする。

「何をする気なの？」

「今は、何も」

銀髪の少女はますます笑みを深めながら答えた。
フィーグルは知っている。この女がこんなにも笑う理由など、一つしかない。

――ああ、可哀想に

何かを哀れみ、悼む時だ。

戦争！　戦争！　戦争だ！
喜べよ下種畜生ども。地獄のラッパが響いてきたぞ。
俺達が呼ばれている。
多くの血を流すため、多くの命を踏み潰すため、多くの死を広げるために。地獄の戦鬼が。

よう戦友！　アンタが求めるのは血か？　金か？　闘争か？　栄誉か？　はたまた正義なんて求めてるのか？
まあ、いいさ。どれだって。御大層な理由だろうがクソみたいな理由だろうが、やる事も同じなら逝く場所も同じなんだからよ。

どうあれ、ここにいるって事は俺と同じく戦争をより盛り上げたいってイカレ共だ。
死体と涙と恨みと鉄屑を空高く積み上げたいって、死んだら地獄行き間違いなしの畜生共だ。

同じ死体を漁る野良犬同士、せいぜい仲良く分け合っていこうぜ、なあ？

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格闘反応な命が葉っぱ勢のあなたに。
ユニオン活動は格闘×3　反応×2 → 格闘×2　反応×3の順で更新毎に変更していきます。

10人の状態で死亡者が出た場合、また2更新以上行動しない場合は参加許可を外す可能性があります。ご了承ください。

ユニオン購入は何かしら意見あるまでは機動力＋3%を予定しています。