ENo.0406　ファイブカード

　
仕事を終えて帰路につく。
今回は弾薬も使ったし、機体も少しだけ損傷を受けていた。
だから整備費もちょっとくらいかかるだろうなあと思いながら補給所に寄った。



───そうして、機体を整備に出して返ってきた請求書を見て目を疑った。
なんで整備費が676cも？

やたらとリロードして弾を撃ち尽くしたわけでも、機体が大破したわけでもない。
何かの間違いなんじゃないかとおそるおそる確認したら、大部分が弾薬費なのだと答えられた。
私が今回持ち込んだ焼夷機関砲は、高い火力と引き換えに高いコストを要求するのだと。



知ってて撃ったんじゃないのか？　とでも言いたげな表情を浮かべた整備士に頭を下げて補給所を後にして。

修理を終えて返ってきた『ファイブカード』の操縦棺に入り、はぁあ、と大きなため息をついた。
パーツの一つも買える値段だったなあ。そう呟きながら請求書を放り込もうとしてダッシュボードを開ける。
そうしたら、別の請求書がダッシュボードの奥に押し込まれていた。

こんなの前からあったっけ、以前の乗り手の誰かが置いていったものなのかな、と思いながらそれを手に取って眺めてみる。



……中身を見て、思わず笑いが漏れた。

整備費合計1317cの請求書。
その奥には、また別の整備費1705cの請求書。

一体何があったんだろうか。
機体が大破した？　それとも私よりもずっと弾薬を使い過ぎた？
その内訳は分からなかったけれど、きっと請求された当人は私と同じ気持ちだったのだろうな、と感じた。

この機体を買う時にかつての乗り手たちのことなんて気にもしなかったし、今も知ろうとも思っていない。
それでも、何やら似たような振舞いをした誰かがここにいた───そのことはどこか、緩い親しみを覚えるものだった。

かつての乗り手たちの遺したもの。

今は大型のレーザースコープとしてここに在る。
常より射撃の訓練、あるいは実戦に用いる者がいる。