ENo.0141　鼠花火

目的地の近くにとった安宿で目を覚まし、前日に買っておいた端末に入っているメフィルクライアからのメッセージを確認する。
ここ最近、ミッション当日のネズミの朝はこうだった。
前回は違った。
今回は。

「…どうなってんだ」
死んだんじゃなかったのか。確かにこの間のニュースは、メフィルクライアが事故で死亡したことを伝えていたはずた。
ならこのメッセージは、何だ？

内容には至っておかしな点はない。今まで通り、次の目的地の情報を伝えるものだ。
事故のじの字もないところが、不気味さを増長させている。
まあ、事故で死にました、とか書いてあっても困るのだが。

これは一体誰から届いたものなのか。
生前に書きためていた？
誰かが名前を騙っている？
──実は死んでいなかった？

メルサリアとかいう、企業連盟の(元)お偉いさんが言っていたことがひっかかる。
メフィルクライアには、奇妙な点があると。
なんとなく、胸騒ぎがして、落ち着かなかった。

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。