ENo.0406　ファイブカード

　
HCSの進歩は目ざましい。
少し前まで及びもつかなかった機体性能の向上が次々に実装されている。
私自身も、その恩恵は諸所で受けている身だった。

ならばそれで。
さらなる強大な力を手にしつつあるハイドラを、どのように用いるか。



───その答えの一つを、コロッセオでの互いの戦闘に見出した誰かがいるらしい。

ニュースはハイドラ同士の真剣勝負、あるいは見世物の話題で持ち切りだった。
誰と誰が戦う、あの武装が持ち込まれるらしい、あいつはここで死ぬんじゃないか……そんな下馬評もいくらでも耳に入る。

それを私は、どこか他人事のように眺めて聞いて過ごしている。
積極的にコロッセオに赴くような蛮勇なんてはなから持たず、
かといってコロッセオでの仕事を断固として断るような意思も見せず、
そんな曖昧な立ち位置で。

傭兵の命なんて余興に消費されるくらいの軽さでしかない。
そうした言い訳のような思いをどこかに向けて、私はコロッセオの中継を眺めている。

かつての乗り手たちの遺したもの。

今は大型のレーザースコープとしてここに在る。
常より射撃の訓練、あるいは実戦に用いる者がいる。