ENo.0349　ラキア・パラミダス

メルサリアのメッセージを受け取ったラキアは、ひとり嫌悪の表情を浮かべる。
記憶洗浄だと？この男は、他人をなんだと思っているのだろう。
フレイドとソラという、記憶を失った友人が身近にふたりいることもあってか、メルサリアのこの言葉はひどくラキアの癇に障った。

残像領域には法という概念はなく、企業の倫理が最上段にあって全てを支配しているということを再認識させられた。
ラキアの祖国ランストラは曲がりなりにも法治国家である。そのような、人を人とも思わないような行いは決して許されるものではない。

もちろん、ランストラ王国の全部が全部公明正大であり、正義の体現者である……と、信じるほどラキアは幼くなかった。
王座を巡る何百年にもおよぶ貴族同士の不毛な権力争いは、騎士の質の低下を招き、腐敗の温床として問題にならない日はなかった。
けれど、表向きには正義を推奨し、法を尊ぶことは当たり前とされていた。

ここでは、その建前すら必要ないのだった。
オープンではないメッセージとは言え、メルサリアには記憶洗浄という非人道的な行いを隠す気すら感じられない。

「この男は、私にとって敵だ」

ラキアはあえて口に出して、敵意を確かめる。
だが、そんな男の都合に合わせて、命を張って戦わないといけないのが、今のラキアの立場なのだった。

果たして、この戦いの行く末にいくばくかの正義はあるのだろうか。


白い闇は深く、先を見通すことは難しかった。

鉄の騎兵を駆る騎士のためのユニオン。
とある王国が買い占めた土地に建つ巨大な要塞『エクゼター』を本拠地に活動をしている。

ユニオンメンバーになるには、騎士としての十分な名声、もしくは一等以上の位をもった騎士による推薦が必要。
シンボルマークは、青地に銀のガントレット