ENo.0206　モニカ・フランクリン

　別にまあ、命が惜しくなくなったとかそういうわけではないのだ。全く。

　ストラトスフェア要塞攻略戦。
　兼ねてから予告されていた大規模作戦がまたすぐそこに迫っていて、私も当然参加する。
　別に、命が惜しくなくなったわけではない。全く。決して。私は死にたくないし、絶対に死にたくないし、死なないために頑張ろうと思っていて、
　それを控えて、その手前の作戦で、それででも、なんとなく、じゃ言い訳できない程度には、今回の自分の機体が軽装であることへの、自覚はある。

（最近戦果が鈍ってるし）

　前回の攻撃戦果が久しぶりに10パーセントを下回った。
　今までの機体のメンテナンスに専念し、新しいパーツを買わずに済ませたことから出費は抑えられていたし、機体の損壊も少なかったから問題にはなっていない。むしろ支出と比べれば収入は多くなっているくらいだ。
　私はお金が稼げればいい。お金を稼いで、生きていくためにこの残像領域にいる。

（借金も返さなきゃならないし）

　だからと言って危険に身を晒すことに甘んじるのは逆効果だ。何より機体が壊れればその分支出が増える。
　逆関節にストライドシフトシステムは相性が悪いとも囁かれていて、でも、火力の底上げには有用だ、と自分の中の冷静な部分が確かに囁いている。

（キリトさんが支援に徹してくれてるんだから、それに報いなきゃならないとも思うし）

　だからって、
　だからって、
　死んだら何も意味がないのに。

（攻撃も、最近ろくに当てられたことないし、このまま速度に特化したほうが）

　それが慢心であることも、理解しているはずなのに。

　なのに。
　どうしてだろう。

「……うん。これでよし」

　端末に指を滑らせて、画面を再確認して、閉じる。
　機体を見上げる。ヘリオトロープ。私の愛機。

　戦場を駆ける友として、あなたに命を預けています。

ひとりでもユニオン。