ENo.0614　ルーチェ・アーミスト

私が居ない間に、住人が一人増えていた。
名前はユメと言うらしい。
相手の顔色を伺い、慎重に言葉を選ぶ、良くも悪くも臆病な女の子だ。
セイランがまた、私の時のように拾ってきたらしい。
ただ、一つ違う所を挙げるとすれば、セイランが私に対しては打ち解けているような一面を見せる一方でユメへは何か......表現にはし難いがどこか大切に扱っているように見えた。

──まあ、ユメとまだ馴染めてないからなんだろうけど。

私は友人、もしくは親しい同居人。
ユメのことは......どう思っているのだろうか？
基本的に自分の好きなように動く彼女が全く考え無しに動くとも思えない。
ユメの中に何かを見出だしたのだろうか？

「よし、分かんなかったら自分から！」

もやもや考えているだけというのは性に合わない。
親睦を深める意味でも話しておいて悪いことは無い。
思い立ってすぐに私は彼女の元へ向かった。

「ユメ、今いいかな？」

「......ルーチェさん？はい、どうぞ......」

ユメの部屋へ入り、感じたのはセイランの部屋に初めて来た時と同じ、『最低限』の一言。
二人とも随分と欲がないというか......。
ユメは何の用だろうか？と、いった表情。

「ね、セイランについて聞きたいんだけど、あの子と話してみてどう？」

「えっ！？き、急にそんなことを聞かれても......。どう、ですか......」

うーん、と唸りながら唇に指を当てて思案する。
この子のことだ。
悪いように捉えられないよう細心の注意を払っているのだろう。

「少し、難しいです......。何を考えているか掴みにくくて......。あ、でも悪い人じゃないってことは分かってるんです......！」

「そうだねー、それは私も分かるよ。あれでも最近やっと素の自分を見せてくれるようになってきたから、君も慣れてきたらもっと砕けたお喋りとか出来るはずだよ」

「そうですか......」

──喋る言葉も最低限？
否、まだ私に慣れていないのだろう。
少し時間が掛かってもいい。
こうして話していく内にもっと仲良くなれるはず。
そうだ、私とセイランの二人の間で留めておくつもりだったが、印象を柔らかくするのにいいネタがある。

「この間、君が来る前のことなんだけどね？セイランと二人で食事に行ったことがあるの」

「......？」

またも唐突に始まった話に、彼女は首をかしげる。

「あの子オムライス頼んでてね？ほっぺにケチャップ付いてたから教えてあげたんだけど見えないから自分で取れなくてさ。私が拭いてあげたんだけど、なんて反応したと思う？」

「......怒られませんでしたか？」

やはりセイランは少し堅く見えていたらしい。
この話をしてよかったと心底思う。

「怒ったといえば怒ったんだけどね。誰かに見られてないか周りを確認して顔赤くしながら『逆だと言ってくれれば分かる......』って恥ずかしがってたの！」

案外可愛いとこあるでしょ？
と付け加え、微笑んでみせる。
あの時のことを思い出せば自然と笑顔になれるというものだ。

「セイランさんが......」

ユメはセイランが顔を赤くして恥じているところを想像したのだろう。
少し驚いてからしばらくして、ふっと吹き出した。

「それ、私も見てみたかったです。私が思っているよりも、もっと人間らしい人なんですね」

「そう！そういうわけだから、気難しく感じなくても大丈夫。冷たい人でもなければ怒りっぽい人でもないからさ」

初めて彼女の笑顔を見られた。
セイランが彼女に何を見たのかは分からなかったが、いずれ接している内に分かるかもしれない。
この子とも仲良くやっていける。
今はそれだけ分かれば十分だ。

残像領域のどこかの町にある、行き場のない者の寄り合い所。運営は気まぐれ。
利用・改築自由の集合住宅。2LDKの5階建て。
管理者に御用の方は、3階の角部屋まで。

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ユニオン活動：現在は制御*5
ユニオン購入：経験値+1、またはAP+10%