ENo.0640　佐々神 玲狐

『HEYサッサ！マーケットにバイオ兵器を生み出すレーダー売ってたよ！』
　意気揚々とガレージに戻ってきた赤い縦巻ツインテールの少女が笑う
　その傍らには大きなレーダーが2つと、ついでのように積まれた砲塔が一つ
『ん？ああこの砲塔？いやほら、いい加減見た目が不細工なのをどーにかしよっかなーって？』
　グレーの長髪を靡かせる無表情な少女の視線に気付いたのか、砲塔をコンコン、と叩いて
『まぁ砲塔だけだけどね。私らの機体は攻撃向きじゃないし。ほら、見た目って大事じゃん？』
　そう述べてガレージ内で整備中の機体、というより戦車を見て苦笑する
　相変わらずと言えば相変わらず、車体にレーダーと培養槽だけが乗った、車とすら言えないような代物がそこにあった
『いやー、こんなんにしたのは私だけど何度見てもひでー見た目！』
　ケラケラと軽い笑い声をあげつつ、キャタピラを叩く
　その様子に無表情だった灰髪の少女が僅かに口元を緩めて
「……本当に酷い見た目。……センスない。」
『ぐはっ！い、いやいやサッサ。待ちたまえ。レムセアちゃんは真面目にやればちゃんと可愛く綺麗に作れるよ！？』
　胸元を押さえながらオーバーリアクションを取りつつ、赤髪の少女が抗議する
　薄らと笑みを浮かべた灰髪の少女は、そんな赤髪の少女から視線を外し小さく肩を揺らして笑っていた


「……それで、今回はどうするの？」
『聞いて驚け！今までの装備をグレードアップしただけで戦闘方法は変わらん！以上だ！』
「…………驚く要素がない。」
『それな。』
　不要になったレーダーを取り外し、新たなレーダーの取り付け作業に入りながら少女達が言葉を交わす
『まぁでも、今までより性能はダンチになるしいいんじゃないかなーって。あ、サッサレンチ取って。』
「……基本性能の向上は重要。……ん。」
『サンキューマイサン。んでもそろそろ何かこう、何か欲しいねぇ』
「…………抽象的過ぎて分からない。」
　互いに手を止めず作業に没頭しながらの雑談
　手慣れた様子で整備作業をこなす少女はしかし、唐突に手を止めて
『いやほら。もっとこう、バーッ！と戦場駆け巡ってカッコ良く必殺技とかキメたくない？ならない？』
　レンチを握ったまま身振り手振りで自らが格好良い、と思っているのであろうポーズを取りながら、キラキラした眼で灰髪の少女を見る
「……それなら新しい機体を作った方が早い。…………換装と言うより、乗り換えになる。」
　そんな少女に目もくれず、しっかりとレーダーの固定が終わったのを確認して溜息を一つ
『まーそうなんだよねぇ。んじゃしょうがない、この機体が吹っ飛んだら考えよっか』
「……その時は私達も吹き飛んでそう。」
『大丈夫大丈夫。レムセアちゃんは死なないからな！』
　ふふん、と鼻を鳴らしながら胸を張る赤髪の少女とは対照的に、灰髪の少女は小さく首を振って
「…………私は死ぬ。」
『それな。カーッ！世の中世知辛ぇー！』
「……まぁ、死なないように？」
『はーい。ま、このままコイツと添い遂げるのも面白そうだしね？』
　灰髪の少女は顔を上げ、赤髪の少女は視線を降ろす
　目があった二人は数秒の間の後、破顔して笑いだし
『それじゃ、しっかり整備すっか！』
「…………うん、次はもっと活躍できるように。」
　そう呟いて、二人の少女は機体の整備に戻るのだった

苗床を研究するためのユニオンだよ