ENo.0261　Solitus

かちかちと届いたボイスメールの山を再生する。
一つ一つ丁寧に確認をしていくと、カナエはぼすりとベッドの上に倒れ込み、くつくつと小さく肩を揺らした。

「――あっはははは！　本当、面白いことになってきたなぁ！」

心底楽しいと言いたげな声色でそんな言葉を口にするカナエ。
そんな相棒の様子に目をぱちくりとさせて、同じように彼の傍に倒れ込んでみると、カナエはベッドに寝そべったままソーナの頭をわしゃわしゃと撫でた。

「いろんな人たちの考えとか、企みとか、そういうのがぐっちゃぐちゃに入り乱れてきて……あはは、本当、面倒だけど面白くって笑えてくるよ」
「……テイ、楽しいの？」

彼にぴったりくっつくように寄り添ったまま、楽しそうな様子の相棒に話しかける。
すると、カナエはちらりとソーナのほうを見て――両手を伸ばすと、まるでぬいぐるみを抱きしめるときのようにソーナの小さな身体を抱きしめてきた。

「楽しいよ。楽しくって笑えてくるくらいに」
「……そう……？　……わたしは、よく、わからない」
「ソナはこういうのを楽しむタイプではなさそうだしねぇ……まあ、ソナはそれでいいんだよ」

余程機嫌がいいのだろう――ひたすらにソーナを抱きしめてきて、その状態のままベッドの上でごろごろしているカナエの表情や声色はどこまでも弾んでいる。
ひとしきりソーナを抱きしめたまま転がったあと、彼は再び端末に手を伸ばして、ボイスメールを最初から再生しはじめた。
コロッセオ・レギュレータの広報は様々な勢力がハイドラライダーの力を必要としていると言っていたけれど、こんなにたくさんのボイスメールが一度に届いた辺り、その言葉に嘘はないのだろうと感じられる。
純粋に協力してほしい者、飼いならしたい者――その奥にあるであろうものは、一人一人違うだろうが。

けれど、ソーナの傍にいてくれる彼は、大人しく飼いならされるような人物ではないことを――ソーナはよく知っている。

飼いならされているふりをして、大人しく首輪をつけられているふりをして――最終的に、自分を繋ぐ鎖も首輪も引きちぎる。
ソーナが知っている範囲でも、調唄鼎という少年はそういう少年だ。

「……どう引っ掻き回してやろうかなぁ……」

左右で色が違う瞳をゆるりと細め、うっそりとした笑みを浮かべて呟かれたカナエの声色は――どこまでも、どこまでも楽しげなそれだった。