ENo.0257　アグリオ・ブリッツ

『ねぇ、ねぇ、おじいさま！ 次は何を作るの？』
『そうだね……アグロヴァルは何を作ってみたいかな？』
『えーっとね、えーっとね……キッシュ！ お母様がおじいさまのキッシュ、好きなの！』
『嗚呼、それは好いね。 リリィは確かに、昔からあれが好きだったから』
『……喜んでくれるかな？』
『きっと喜んでくれるよ』

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「……？」

そこで目が覚めた。
夢か、夢だったか。 随分と久々に昔の夢を見た気がする。

「あの後は確か……姉様達が『私達もやるわ！』って乱入してきたんだっけか」

それでキッチンがぐちゃぐちゃになっちゃって、じいちゃんとのキッシュ作りはうやむやになってしまった気がする。

「……家に帰ったら、じいちゃんにキッシュ作ってもらおうかな……」

母様も、僕も好きなじいちゃんの料理。
レシピ自体はもう教えて貰っているけど、それでも。
僕はやっぱりあの時、じいちゃんとキッシュが作りたかったんだと思う。

「……まさか夢に見るなんて」

それは流石に予想は出来なかったけど。

時計を見れば、そろそろ起きる時間のようだ。
……まずは顔を洗って、簡単に朝食を済ませてしまおう。

……この残像領域で戦う間は、アグロヴァル・エッフェンベルグである事は忘れておかないと。
僕はまだ未熟だから、戦闘中ホームシックになるなんて危険を冒す訳にはいかないんだ。