ENo.0688　チェシカ

初めて参加したゲームは思っていたよりも難しいものではなかった。
言われていた通り、隠れているターゲットを見つけて追いかけていればチームの仲間達が捕まえてくれていたし、最初こそ扱いに慣れなかった機体だって、驚く程に馴染んでまるで自分が手足を動かすのと変わらない位にスムーズに扱えた。

「ねぇ…最初は20人位チームの人が居たと思うんですけれど…気づいたら半分くらいに減っちゃってて…どこに行っちゃったんですか？」

白い部屋の天井にあるスピーカーに向かって話しかける。

『んー…いい質問ですねぇ。鬼ごっことはいえ、実は相手もこちらを捕まえる事もできるんですよね。チェシカも何度か狙われていたでしょう？チームの人は捕まってしまったので、フィールドから退場してもらっていたんですよー』

今日は女の人の声だ…名前は、なんていったっけ…？

「…ふぅん。そう言われればそうですね。」

そうなのかな？でも、自分を助けてくれた人たちがそういうのだから、たぶんそうなのだろう。
こうして世話もしてくれているのだから、悪い人たちじゃないんだと思う。

『最後まで残ってて、上手でしたよー。また近日中に開催されるみたいなので、エントリーしておきましたからね。
ゆっくり休んで次に備えてくださいね。おやすみなさい。』

そういってブツンと音声が途切れた。
ゆっくり休んで…かぁ、そっか…休まなくちゃ、眠い…眠いなぁ。


猛烈な眠気に襲われて、部屋の中央にある台によじ登ると横になる。
白くて窓もなくて、出入り口が一つしかない私の部屋。
寒くも暖かくもなくって、不快感なんてものはない。

うとうととした眠気で意識は朦朧となる、ふわふわとした浮遊感にえも言えぬ幸せを感じて私は眠りについた。

『まだまだ子供ですから、やはりエネルギー出力が不足気味ですねー…早い内に手術をあと一度…済ませないと…』

『あぁ、大丈夫大丈夫。起きやしませんよ、きっと幸せな夢でも見ていますって。私たちの技術は“残像領域”で一番をうたっていますからね。はっはっは――』

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