ENo.0688　チェシカ

『空にお魚さんが飛んでいたんですよ、あれは何なのですかね？』

スピーカーからそう聞こえる音に、何を言っているんだ？と、思わず声が漏れそうになったのを堪えた。

「へぇ、それは何時ごろにどのあたりで見たのかしら？」
『この間のゲームの時です。大きな魚…だと思うんですけど、ぷかぷか浮いていて、気になっちゃって…』

適当な相槌を返しながら、前回の試合の記録を巻き戻す。

うっとりと空を見上げるチェシカ、彼女の顔の前の光粒子モニターは確かに空を飛ぶクジラを映していた。

はぁ…なるほど。映像補正で、こんなメルヘンチックな世界を見ているのか…と░▒▓██▓▒░は思わず笑ってしまった。

『…私、何か変な事…言っちゃいましたか？』
「いいや、ごめんごめん…チェシカが可愛らしものでつい、ね。あれはくじらだよ、魚に見えるけど動物なんだ。
……あれ、実は機体なんだけれど、興味があるなら次のゲームの時に準備しようか？空の高いところを飛べるんだけれど。」

『本当ですか！？飛べるなんてすごーい。空から見たこの世界はお花がいっぱいですっごく綺麗でしょうね！楽しみです。』

弾むその声に、また吹き出しそうになる口元を抑えた。




次元潜航可能機―軽く脆い装甲のその機体を░▒▓██▓▒░の見るモニターの中のチェシカは、羨望の眼差しで見上げていた。

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