ENo.0688　チェシカ

チェシカは部屋に置いてあったレンズを覗き込んでいた。
薄水色のレンズを覗くと、文字や時には図形や波形が浮かび上がる。

部屋のあちこちをレンズを通して見ると、最後にスピーカーへと向けた。

sound onlyと文字が出て波形がうにょうにょと動き出す。
スピーカーからは男の人の声が聞こえた

『面白い？』

「…はい。」

『それは、今度の機体に積むパーツのひとつだね。目の代わりになってくれる機材だよ。』

「そうなんですか？でも上手に使えるかなぁ…。」

『大丈夫！ゲーム中は、相手の中から狙うべき相手を見つけて教えてくれるんだ。
今までは自分で探さなければいけなかったけれど、それを知らせてくれるから…何か指示が出たらその通りに動くといいよ。
新しい機体も上手く扱えていたし、これと組み合わせればきっとチェシカも良い成果を出せるさ。』

「……はい、役に立てるように。ちゃんと頑張って稼ぎます。」

声は上機嫌に続ける。

『今度のゲームは、余興というか…いつもの要素にプラスして盛り上げる必要もあってね。
君はまだ参加して4週目のルーキーだし、正直なところ注目なんかはされていないだろうから、ちょっと目立たないと埋もれてしまうんだよね。
多少失敗しても、新しい事にチャレンジして…改善点を持って帰れれば合格点だと思うよ。
成果が出てゲームを見ている人が盛り上がればれば万々歳！！ってところかな。

ま…検討を祈るよ。』

ブツンと音は切れて、レンズは一本の線を映し出した。

ここに来てもうすぐ5週目………一体いつまでこのゲームを続ければいいのだろう？
今はクジラにのって、かわいらしいマスコットを見つけて追いかけて捕まえて。
全然怖くはないのだけれども…こんな事で本当に役に立ててるのだろうか。

「おとうさん、おかあさん……会いたいな。」

かざしたレンズの反対側からは、チェシカから不規則に揺れる波の線が発生しているのが見えた。

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